***世界が悔やむ最果て

―14―







侵される









正直、驚いた。
祐希は兄の行動に、困惑と共に驚く。
嫌悪や不快はなかったが、戸惑いは大きかった。
その表情は、あまり表されていないが。

(何……なんだ、今のは)

尻を撫でられ、指が内部に入れられた。
何処か、強く押されると意志とは無関係に精が吐き出された。
粘つく液体が昴治の腹あたりにかかるのを呆然と見る。
内部に、射精を促す部分があり刺激された事により
そうなったと、回転の早い頭が答えを出していく。

「はぁ…っ……」

同性同士の交わりは、これが当たり前なのかと
思わせるように昴治は落ち着き、まだ余裕があるように映った。
認識や頭の回転は早くとも、経験のない事は
大きく祐希と昴治の間に差を作る。
男との経験済みだとは思わなかった。
顔こそ、童顔でどちらかと言えばむさ苦しくない昴治は
同性との、そういう接触を嫌っていた。
昴治は『男』だった。



ならば、何故



祐希は昴治に噛み付く。
鋭い青が、自分からの一方的な殴り合いの時でも、あまり見ない
強く捻じ伏せるような深い眼差しが射抜いた。









「ほら、足、出せって」

幼い手が伸ばされる。
小動物のように丸まって、幼い子が足を出した

「すこし、しみるからな? 我慢しろよ」

「いたいの、いや」

涙をボロボロと零しながら、幼い自分は言った。
同じく幼い兄は口を開く。




「消毒しなきゃ、ダメなんだよ」







息を荒げる祐希の戦慄く咽喉に噛み付かれる。
それに祐希は震えて、昴治を見ようとするが肩口に額を当てられ見れない。
甘く噛まれた其処に、痛みはもはやなかった。
明日になれば、痕さえ残らないだろう。

「ゆうき……」

囁く昴治の声は熱を含む。
息を吐けば、咽喉に触れる空気がひんやりと冷やした。
じわり、じわりと滲むような何かが広がる。

(痛ぇ……)

全身が痛い。
形容もなく、ただ痛い。

「ゆうき」

祐希は瞳を閉じ、熱い息を吐いた。
呼ぶ名は、自分のようで自分ではない。
昴治が見ているのも、自分のようで自分ではない。
広がる、それは痛みでしかない。



蝕む、それは怪我した時の痛みに似ている。
化膿する傷口から、毒が入り込んだような、痛み。









消毒しないとな、ダメなんだよ





ああ、そうだな
でも、まだ……時ではないから

痛みを、我慢して、此処に在る





(続)
恋は毒。
相手が思いを吐かないのなら、尚のこと。
みたいな? 感じ。
寄生ではなく、祐希にとって昴治の向けるソレは
排除すべき『毒』なんです。
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