***世界が悔やむ最果て
―10―
指し示した
教えられた
まだ、続けられている
「これだ」
小腹が空いた。
部屋の中に篭りっきりではダメだと昴治は言い
祐希と共に近くのコンビにに来た。
渋りながらも、共に来た祐希は不機嫌な表情を隠さずに昴治を見下ろす。
「あァ?」
「だから、これだって」
昴治が指差すモノを見た。
『ポテトチップス・餡子風ミート味』と書かれたスナック菓子だ。
その文字を読んだ途端、祐希は眉間に皺を寄せる。
「昨日、テレビでやってて……ちょっと気になるよな」
そう言って、笑みを浮べて昴治は見上げてきた。
祐希は瞳を伏せて、溜息をつく。
「アンタ、馬鹿じゃねぇか?」
「結構、上手いかもしんないだろ。おやつな、これ」
不平も聞かず、昴治はそれを取ってカゴに入れた。
そしてキョロキョロと物色しだす。
祐希はその背を見て、そして俯いた。
――ゆうきっ!
脳の中で弾ける記憶が、鮮やかに映える。
自分より前を走る兄は、振り返って笑った。
――これ! ぜったい、これで大丈夫
何かに対して、兄は『これだ』と指し示した。
正しい、正しくないは、もう、どうでも良い話。
その時が一番、兄は笑っていた。
そして、今
同じように笑う。
兄の友人や、知人、あおいなどに向ける笑みとは違うものを。
祐希に向けるようになった。
触れ合った、その時から、殊更にその笑みは増えていく。
――望みは?
――俺は……
(アンタは、馬鹿だ)
祐希は唇を噛み、自由のない右手を見た。
まだ自由になる兆しはない。
成長期だから、治りは早いだろうと言っていたが。
まだ時間は掛かる。
アニキ は 決めた
(俺も、決めた……)
昴治が振り返る。
笑う事などできないが、歪んでいただろう表情を
不機嫌なモノへと摩り替えた。
「なんか、欲しいのあるのか?」
「……普通の菓子」
幼い頃のように、兄の問いに答えた。
自分ではない。
自分ではない、自分の態度に深い笑みを昴治は浮べた。
自分が、決めた事を 幼い頃の兄は何て言うだろうか
ふと、片隅で祐希は思った。
(続)
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