+++青に染まる海
―アクアリウム―
青の反射が、綺麗で
されど、水面が見えない
透明の壁がそこにあって
様々な魚と泳ぐ
肌に青が映る。
そこに水面の煌きがあった。
首に絡んだ指先が冷たい。
震える間もなく、強く絡む。
「ぐっ…っ、っ……」
何度も罵倒されて
何度も殴られて
何度も軽蔑の眼差しを向けられ
痛いコトばかりだった。
募るのは苛立ち。
何で、自分が。
自分が、相手に何をしたのか。
問いかけるばかりで、されど答えを聞こうとはしないで。
ひどく、今は穏やかだ
(おかしく、なっちまったか…?)
問いかけは自分に。
冷たかった手は、首の熱にあたたまって
そして尚も強く力が入れられる。
苦しい。
だが、何故か穏やかだ。
首を絞められていると、云うのに
抵抗はしなかった。
霞んでいく視界の中で、昴治は懸命に祐希を映そうとする。
虚ろな瞳が
強く揺らいで、何かを訴えている。
自分に、死んで欲しいのだろうか。
目の前から、消えて欲しいのだろうか。
絞められている部分から、強く脈打ちが響いた。
あと少し、手に力を入れれば
その開いた瞳が閉じられるだろう。
「……っ……」
映った青は、暗く。
けれど煌いている。
何処かに、閉じ込められてしまったかのような
昴治は右手を上げて、肩に痛みが走るものの
それでも弟の頬に手を当てた。
「……」
一つ、震えて
「っ…かはっ、けほっ……っ、はぁ……はぁ、」
絞めていた手が離れる。
急激に入り込んだ酸素に、咳き込んで
昴治は手を下ろした。
「……悪かった……な……祐希」
自分の上に乗っている弟を見上げて、呟いた。
水面のない、水の中で
苦しそうにもがいている。
その水の牢獄で
泳げない魚は、どうなってしまうのだろうか。
(続) |