*+おしゃべりな瞳+*

―Smile to smaile







ああ、好きなんだ

祐希が好きなんだな…











ベットに沈むオレの体。
覆い被さってくるのは弟。
道徳的には変だ。
けれどそれでもいいかもしれないと思わせるのは
オレの頭を撫でる手。
親に撫でられたのは遠い昔だ。
何年ぶりかと思われるその行為はオレを心地よくさせた。

弟に撫でられてるのか…

それも変な気分にさせる。
嫌じゃない。
だからじっとしてる。

「っ…はは…くすぐったい、」

触ってくる手はホントにくすぐったかった。
それにしても、この体勢から察するにオレはまさか…

「祐…希…、」

「あァ?」

睨むなよ。
オレは息を吐き、胸あたりを撫でる手を掴んだ。

「あのさ、聞きたいんだけど、」

「なんだ?」

「あの…俺がその…、女の子役なのか?」

「アンタできるのか?」

「いや…別にしなくても…いいんじゃ……」

「嫌なのか?」

考えるより先に俺は首を横に振っていた。
冷静に考えれば止めるべきだと思う。
けれど気持ちが高まっていた。
それに、祐希の瞳が俺を動けなくしているようにも思える。

「なら、するぜ…」

「……」

掠れた声にドキドキした。
何か変だ。
上に乗っている祐希が俺のシャツのボタンを外していく。
ゆっくりだと思った手は案外急いでるようだ。
ボタンが何個か飛ぶ。

こういう所で恐怖を煽るのかな、

見れば少し祐希が恐く思えた。
すぐにその恐れは消える。
大きく見える祐希の体は、少し嫉妬するけれども
あんなに小さかった弟がこんなに大きくなったんだ感心した。

「…っ…なに?」

「何ぼーっとしてんだ、」

「いや…大きくなったなって、」

上を仰ぎそして息がかかるくらい顔が近づいてきた。
かかる髪が頬をくすぐる。

「ああ、大きくなったぜ。」

「自分で言うか…?」

祐希が俺の手をとり、下の方へやった。

「…!?」

「な、」

いたずらっ子のような顔をする。
そんな表情は久しぶりで思い出が巡るのだが、
触らせられた場所が場所だ。
確かに大きくなってるけど……

「バカか!何処触らせんだよ!」

「何処って、そりゃ…」

「言わなくていい!」

唇だけで笑われる。
揶揄かってるのだろうか。
少し睨んでみれば、祐希は目を伏せオレの胸に触れてきた。
揉むように触れる。

「……あの…俺には胸なんて……っ!?」

乳首を抓られた。
痛いと思ったら、ビリリっと何か痺れがはしる。

「…いた…抓るなっ……」

「…キモチイイじゃねぇの?」

「ビリビリくるだけ…っ…」

舐めてる。
そして赤ちゃんみたいにオレの乳首を吸いはじめる。

なんだ…これ…

「んっ…」

体が…なんか…

「…ふっ…あ!」

オレの声じゃない。
鼻にかかった変な声。
なんか凄く恥ずかしくなってきた。
オレは祐希の頭を掴んで胸から離そうとする。
祐希はすぐに顔を上げてくれたのでホッとした。
じっと見ている祐希を見返す。

「祐希…え、ちょっと!!」

カチャ、カチャ

ベルトが外される音がする。
止めようと動こうとする前にチャックを下ろされ掴まれるた。
直接的な刺激は頭を突き抜ける。

「…やめ…ぁあ!!」

「固くなってきた…」

固くなってきたって…そんなトコ…っ

混乱していくのがまざまざと解る。
触れられた所が熱くなっていく。

「…っ…ん、ん…ぁ…」

逃げるのは無理だ。
それに逃げたいワケではなく、ただ無性に恥ずかしいだけ。
声だけは押さえようと手を口にやった。
けれどオレの手を祐希が握り取る。

「……」

あ…

そのままオレを見ながら手の甲にキスされた。
ちらっと光ったのは瞳。

ちょっと…うわ…なんだ!

「…そ、そんな瞳で…み…るなよっ」

「?」

自覚がないようだった。
キラキラ光る青い瞳はオレとは違う。

――兄貴…兄貴…

そう頭の中に声が響く。
口から出る声と頭に直接響く声と。

もっと、もっと、もっと、もっと……

欲しいと思っているのは祐希かオレか。
どちらなのか解らない。

「兄貴、ぬるぬるしてるぜ、」

「な…おまえ…っ!!あ、ぁあ!」

クチュ、クチュ

何の音か把握するのが恥ずかしい。
気が狂いそうだ。
声を我慢するのにも、手は取られていてできない。
どうしようかと考えた時だ。
オレのを握る祐希の手が止まる。
そしてそのまま、オレの上に倒れ込んできた。
体の重みは心地よい感じで、溶け込みそうに思える。
倒れ込んできた祐希は右肩に触れてきた。

傷痕が残るところ。

まさか、気にしてるのか??

そんなのないだろうと思ったけれど、すぐに触れてきた唇の熱さにびっくりした。
イクミがつけた傷と祐希がつけた傷。
まるであわせた感じでオレの右肩に残る。
後悔はしていない。

「…ゆ…うき?」

傷痕を舐められた。
癒すような仕草は少しくすぐったいキモチになる。
キモチは柔らかくオレを包んでくれた。

熱で溶けそう

まさか告白さえて、返事して、もう既にココまで辿りつくのは早いと思う。
けど、今回はいいかと何処かでオレは許している。
誰かが云っていた、オレは弟に甘いと。
確かにそれは否定できない。
でも今、こういう事を許しているのはソレだけではないと思う。

「兄貴…」

「…ん、」

右肩に祐希の息がかかり、ひゅっと冷たく感じ遅れて熱く感じた。
自由の利くようになった左手で祐希の頭を撫でる。
すると強く抱き返された。

「…声…聞かせろな、」

「……」

声ってあの声だろうか。
あんな声、恥ずかしい。

「……」

こういう事に好奇心がないワケではない。
好奇心があると云っても、祐希以外のヤツとする気はないけれど。
受け入れようとしているのだから、ここは開き直るしかないかと
些か強引にオレは納得した。
任しきれる事はない。
祐希とは血が繋がっていようと他人だ。
だから一つになる事は絶対に無理。
けれど限りになく近くにいける。
そう思うと体から力が抜けた。

「ん…ぅ…」

祐希が触れてくる。

「はぁ…あ……ぁ…ぁ…」

優しく

「兄貴、」

強く

「あ…ぁあ、」

時に揶揄うように触れてくる。
オレは恥ずかしくて堪らなかった。
変な声が聞かれていると思うとよく解らない熱が高まっていく。
下着ごとズボンを脱がされた。
何事かと声を上げる前にソレは行動に移される。

「んぅ…あ、なっ!ちょ…待て!」

マジかよ!オレの…

「ふぁああ!!」

咥えてる!

「う、やだ…ぁあ、あ…んあ!あ…っ」

音が聞こえ、もうどうしたらいいか解らない。
ウソみたいに舌がオレのに絡んでくる。

「あ、ああ…ぁ…あ、やぁ、あ!」

体が跳ねたと思ったら思考が一気に停止した。

ゴクンッ

何か飲む音。
それに意識を浮上させると、祐希がオレの膝の間から顔を上げた。

「ぁ…はぁ…はぁ…」

恥ずかしくて何を云えば解らない。
どうしればいいのか解らない。
恐いワケじゃなくて、ひどく混乱してる。

「おまえ…」

「飲んだぜ…なかなかだな、」

何を飲んだのかは聞けない。
膝の裏側に手が回された。

「兄貴…全部もらうぜ、」

全部?

「いいか?」

――嫌?

瞳が不安げに揺れてる。
オレの瞳はどう揺れているだろうか。
















「あ、ああ!!あんっ!あんっ…んぅ!」

初めは痛かった動きは、今ではとてつもない快楽を伝えてくる。
こんな事、知らなかった。

「んぅ、んん!!ん、ん…ぅ、ふぅ!」

祐希の体が倒れ、オレにキスしてきた。
絡んでくる舌に舌を絡める。
やわらかい感触は、おいしいとも思えた。

熱い…どうにかなりそうだ…

祐希の体が揺れると、オレの体も揺れる。
ベットが軋み、オレは祐希にしがみついていた。
何か飛んでしまいそうな感じがして。
それは少し恐かった。

「あ、…ふぅ、あ…ぁあ!あ!んぅ!!!」

目の前が白く霞んでくる









――好きだ…

ああ、オレも好きだよ




























何かあったとしても、時は変わったりはしない。

「こうじ…」

廊下を歩いていたオレに話かけてきたのは
その姿を射止めなくてもわかる。

「ネーヤ、」

「おなじ…だった、大丈夫…だったよネ。」

「…ああ、」

体には多くの負担があったけど、嫌ではない。
溶け込んだような錯覚はいつでも味わいたいとも思っている。
それは決してアイツには云わないけど。

「ヨカッタね…」

微笑んだ。

「うん、」

オレも微笑み返すとネーヤはふわっと舞い上がって消えた。
消えた場所を暫く眺めていると、向こうの方から声が聞こえる。

「こにゃにゃちゃわーーー!!」

「なんだよ、それ。」

「へへ。これからカリキュラム?」

頷くとイクミはニコッと笑った。

「俺も一緒いい?」

「どうしようかな、」

「あ、ひどーーい!イクミ君泣いちゃうっすよ、」

「冗談だって、」

盛大に泣くイクミを宥めると、イクミはジト目でオレを見てきた。

「ちょっと性格悪くなってません?」

「気のせいだって、ほら行くぞ。」

多くの生徒が行き交う通路を歩く。
それは風のような雰囲気だ。
自然に瞳が向けられる。
通路の上の階に位置する所に、その雰囲気を纏うヤツが
手すりの上に腕を組みながら見ていた。

――兄貴、

オレに話し掛けてくる。

「昂治?どったの?」

「…いや……」

歩き出す。
イクミが少し歩いた後、オレはヤツに顔を向けた。
あまり喋らない癖に。

ホント、祐希の瞳には困った…

キレイに揺らめいて強くオレは捕まえた。
じっと見たままの祐希に笑みを向ける。
微かに瞳が見開いき、そして俯いた。

それが何となく可笑しかった。















もっと話をしよう

もっともっと

時は変わらないものだから

そして




もっと抱きしめて…



















――兄貴

そしてオマエの瞳はオレに話し掛けてくる
今日も明日も

それが嬉しく思うのは









ああ、祐希が好きなんだ…


そう自然に呟いてた――。







(終)
なんか、こういうの恥ずかしいんですよね。
なんででしょうね?がふん


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