…++Last monn++…
―Schaumende Gotteeslust―
想いを馳せるは
満ちゆく月
恋焦がれるは
散りゆき花
頭痛は二日酔いの所為だけとは思えない。
重い痛み。
静かな無機質な部屋には、自分の気配しかなくて。
「……」
冷たく思える布団をかけて、祐希は横になっていた。
時間は朝の7時。
そろそろ目覚まし代わりのID呼び出し音がなる時間。
布団をずらしながら、起き上がれば自分の身体には
汚れなど一切なく、いつもと変わらなかった。
――夢?
夢とはその人の願望、欲求などが含まれる。
祐希は首を振った。
――幻だ…
そうスフィクスが見せた、馬鹿げた虚像。
立ち上がるが、重い頭痛で床に尻を打った。
「った……、」
呻き声を上げ、ふらつきながら立つ。
落ちた布団をベットに戻そうとした。
「?」
シーツが汚れている。
何の汚れかと、指を沿え顔を近づけた。
微かに赤いシミ。
「……」
ケガなどしていないハズだ。
祐希は思考を巡らすと、気恥ずかしいモノが
一気に立ち込めた。
シーツを剥がして、洗面所に駆け込む。
「幻じゃないのか?」
シーツを洗面台に入れ、水に浸す。
流れ出る水音を耳にしながら、鏡で自分の顔を見た。
――どうした…相葉祐希…?
自分に語りかける。
夢ではない。
幻ではない。
そう認識した途端に、己の顔に嬉々としたモノが
混ざっていた。
だからと云って、頭痛がなくなったワケではないけれど。
「はよーーん!今日も元気に捻くれてる?」
リフト艦に続く通路でイクミが挨拶してきた。
祐希は綺麗に無視をする。
「あのー少しは反応返してくれます?
イクミ君かなしぃーですぞ!」
「…消えろ、」
「あら、ひどいっ!と、ふざけるのはココまでにして。
どうしたんだ?」
急に質問がきた。
祐希は立ち止まることなく、瞳だけ相手に向ける。
「朝食来なかったっしょ?
蓬仙が色々言ってたぞ。」
「……」
「あとー黒い服は止めろって言ってました。」
今日も祐希は黒い服を着ていた。
不機嫌な表情を向けながら
「人の勝手だろ、」
そう祐希が言うと、イクミはにゃはっと笑う。
「そうですね、」
手をヒラヒラさせて、イクミは祐希を通り過ぎ、
そして振り返った。
「誰か…死んだっけ?」
「!?」
虚無さえ思える碧の瞳が向けられた。
笑顔の下にある、暗い感情を垣間見る。
「俺は最近、そう思う、」
鋭い煌きはしかし、すぐに消えて。
そのまま何もなかったように飄々と去っていく。
「先行ってますよー、」
イクミは立ち止まっている祐希をそのままに
リフト艦へ歩いていった。
その後姿を見ながら、祐希は目を伏せる。
心が砕けそうな
震えるような感覚。
自分への罵り、嘲け、負の感情が全て
ふとした瞬間に向けられる。
そう、今みたいに。
オマエノ所為ダ
オマエノ所為デ、
――――ハ、消エタンダ!!
誰が?
何が?
頭痛がして、祐希は思考を止める。
顔を左右に振って、祐希もリフト艦に向かった。
「残ルノハ、アナタノ温モリ。」
リフト艦に入ろうとした時、何か人の気配がし
祐希は振り返った。
通路には何もいない。
「……」
静かな空気が流れる。
「誰だ、」
声が通路に響いた。
すると、ふわりと少し離れた場所に何かが降り立つ。
「……」
青の瞳を揺らめかせ、黒の拘束具のような服を纏う。
スフィクスのこうじだ。
「ユウキ…リフト艦に行かナイの?」
すっと伸ばされた指は白く、綺麗な弧を描く。
身体を駆け巡るゾクリとした感覚は祐希の頬を赤くさせた。
けれどその感覚は何か暗い感情に覆われる。
「ユウキ?」
「俺の名なんか呼ぶな、ムカツクんだよっ、」
睨んでも、傷つく顔をしない。
ただ静かに見据える相手は、人ではない証拠とともに
不気味だった。
犯したというのに、平然としているその姿が、
――ムカツク
許せない
あんなに
名を呼んでくれたのに
「……リフト艦…」
祐希はこうじに近づき、襟首を掴んだ。
そのまま上へ持ち上げ、睨みつける。
動揺が見られない。
ほんの少し悲しげに瞳が揺れている。
「うるせぇって言ってるだろ!」
自分に引き寄せたこうじを祐希は拳を上げた。
けれど殴る事ができなかった。
重い何かが自分の身体を取り巻いて、
そしてヒドイ頭痛。
「…頭…痛い?」
こうじを離し、祐希は額を抑えた。
心配そうに見てくる相手を睨み返す。
「うるせぇ!!」
見ないで
見ないで
指し出された腕を祐希は掴み、
引っ張るように歩き出した。
リフト艦とは逆方向だ。
「…何処に行くの?」
こうじの質問に答えず、祐希は近くの空き部屋に入った。
中は薄暗く、倉庫に使われているのか。
色々な物が置いてあった。
「…っ!?」
こうじを床に倒した。
起き上がろうとした相手の頭を祐希は掴む。
膝立ちをすると、尻をついているこうじの顔を
自分の股間あたりにおしつけた。
「何…?」
「キモチヨクさせろよ、」
瞳が見開かれる。
――何やってるんだろ…
自分の行動に祐希は訝しむ。
まるで別の誰かが自分を動かしているような
錯覚を覚える。
身体が相手を欲しているような――…
「好きなんだろ?こういう事すんのが、」
「……好きじゃナイ、」
「嘘つくんじゃねぇ!!!
しねぇとこのまま犯すぞ!!」
もう犯したノニ?
「…口でしたら…入れナイ?リフト艦、行く?」
少しの沈黙の後、こうじがそう聞いてきた。
祐希はこうじを見下ろす。
「ああ、行くぜ。」
出てくるのは冷たい声。
こうじは周りを見回し、そしてズボンのチャックを
下ろしはじめた。
「っ…!」
取り出したモノの大きさに驚いたのか、
少し身が引かれる。
けれど、そっとこうじはモノを手で包んだ。
ぴちゃっ
まだ硬度のないモノの先端をペロペロと
こうじは舐めだした。
「……」
ぴちゅ、ぴちゃ
「…んぅ…」
質量を増しはじめたソレを手で包みながら
口腔にこうじはいれた。
――慣れてる…
その事実は何故か祐希を抉る。
嫌悪と憤怒。
そしてやるせなさが立ち込めた。
何に対して?
――わからない、わかんねぇ…よ
舌打ちをして、モノを口に入れているこうじを見た。
小さい口の所為か、モノは先端ぐらいしか
口内に入れらていない。
「ん…はむっ…んぅん…」
冷たい感情が流れる。
「んぐっ!?」
後頭部を押さえ、モノを無理に口内に押し入れた。
苦しみを訴える声が漏れる。
だが気にせず、そのまま後頭部を押さえたままにした。
「んぅ…ん、ん…」
閉じられている瞳から涙が零れる。
こうじは苦しげな声を漏らしながらも、祐希のモノに
しっとりと舌を絡めていた。
「ちゃんと、口使えよ、」
「…んぅう!…ん、んっ…」
祐希に言われるまま、モノを口腔から出し入れしだす。
ぐぶっ、ちゅぶ
舌が絡められ、室内に響く音がしなくなってきた。
モノを吸いながら出し入れしているからだ。
口腔に入りきらないハズのモノは嘘のように入っていく。
喉まで使っているのだろう。
「ふぅん…ん、」
「はぁ…はぁ…」
視界が霞んできた。
祐希はモノを含み扱いていく相手を見る。
白い無垢なハズの手は袋を揉みしだいていく。
「はむっ…んんっっ!!」
「くっ……」
祐希は精を吐き出した。
喉を鳴らして飲むのだが、飲みきれずこうじは
モノを口から出す。
びゅくんっと残りの白濁した液は顔に掛かった。
「はぁ、ごほっ…がはっ…ごほっ」
咳き込み、こうじは口を押さえた。
べとりとした液はとろりと床に落ちる。
「……はぁ、はぁ…ユウキ、行こう…、」
助けて、祐希…
奥歯を噛み、祐希はこうじを床にうつ伏せに倒す。
「…っ!?やあぁ!!」
尻に手をやる。
着用しているのは皮のように思えたが、案外柔らかい。
身体にフィットしているその布のような物は、
容易に破けた。
ビリッビリリッ
服を破くような音は、恐怖を煽るだろう。
強姦と同じだ。
――前…これと同じ事…
したという錯覚が祐希を混乱させる。
"した"という事実はないハズである。
昨日が初めてだったという祐希の記憶では。
「口でしたら、入れないって…!!」
双丘を掴み、逃げようとする腰を引き寄せる。
「入れないって…っひやぁああ!!!!!」
「くぅ…」
何の施しのないソコはキツイ。
ビクビクとこうじは震え、抵抗が弱まった。
「はぁ、ひっ…やっ!!」
狭くキツイ。
けれど内部は誘い込むように蠢いていた。
ずぶっ、ぎちゅ、
濡れているように思える内部。
動かす度に、何か白濁とした液が零れた。
昨日の残液。
「ひど…いぃ、よぉ…っ!約束…はぁああ!」
「入れないなんて…言ってねぇ、」
「んっやぁ!あ、ぁああんっ!あっ!」
声が甘いモノになっていく。
震えは恐怖でなく、快楽の震えとなる。
ぬちゅ、ぐじゅっ
音は聴覚を刺激した。
支えきれないこうじは、腰を突き出し高く上げた
いやらしい格好になる。
腰を掴み、揺らしながら激しく突く。
「はぁ!?あ、あ…そんっな…やぁ、あ!」
小さな身体は揺さぶられ、悦楽に翻弄される。
頬を床に擦り付け、痛みと快楽に顔を歪めていた。
「激しくしたらっ…やぁ、裂けちゃ…!!あぅ!」
「…はぁ…」
抱いているうちに、このスフィクスが人のように
思えてくる。
――よく知ってる、
見知った大切な人。
――誰?
「はがっ!?あ、あ、大きっいぃ…!!」
「…誰と比べてんだよ、」
「っ…あぁぅあ、あ!ああ、壊れ…あ!!」
答えはしない。
きっと見知らぬ誰か。
祐希は乱暴に腰を動かした。
「科学者と一緒にすんじゃねぇ!
それとも政府の老いぼれか?」
「あっう、ちが、違うっ…んぅ、壊れるっ…やあぁ!!」
言うとおり、小さなソコは充血し裂けそうで、
内部は壊れそうにも思えた。
「あ、あっあ!あ、ゆうきっ…ソコ、ダメっ!!」
「……」
内部をかき回すように動かせば、嬌声は一段と高くなる。
祐希は怒涛に腰を動かしていく。
「はぁ、あ、ぁあ…ダメ、ダメっ…やあ、ゆうきっ!!」
力強く最奥へ突き入れる。
ずぶぶっ
裂けそうな音がし、ビクンと昂治の身体は跳ね上がり、
高く上げられた腰は床に落ちた。
「うっ…ん、」
きゅっと搾り出すように秘部が締まり、
内部へ祐希は精を出す。
「ぁ…あぅ…ん……」
その熱を感じ、掠れた声をこうじは出した。
ビクビクと痙攣している体から、モノをズルリと出す。
白濁とした液が赤まじりで、どぽっとでてきた。
「…っ……」
祐希は相手の名を言おうとしたのか、けれどやはり
喉が焼けるように詰まり、声がでなかった。
放心したような表情のこうじには、
恍惚したものも混ざっている。
開かれた瞳から、ひとつ涙が零れた。
暗い。
上には月があるというのに、暗く思える。
青色にも見える草原に一人、自分はいた。
「……」
自分はココに迷い込んで
自分はココで誰かを待っていて
手を伸ばしてみる。
遠くの白い月は掴めそうだ。
握って、この胸に引き寄せれば
自分のモノになりそうだ。
それは夢
それは幻
それは偽り
真実は想いと共に眠ったまま
「……兄貴、何処?」
小さな自分は一言呟いた。
「!?」
「うひゃーーー!!」
ガバっと起き上がる。
横にはイクミがいた。
「ビックリしたー…まったく悪戯でもしようと
思ったのにぃー。」
どうやら眠っていたらしい。
組みかけのソリッドが画面に出ている。
「……あー冗談っすよ、ぶたないでー。」
「……」
「あのー祐希くーん、もしもーし。」
目の前に手がヒラヒラと振られ、祐希はイクミを見た。
どうやら今、相手に気づいたようだ。
「お疲れ?見た目はスッキリしたように
見えるんですがー。」
「……」
鋭い。
朝から精を吐き出していれば、
それはスッキリしているはずだ。だからと云って、肯定などしない。
祐希は強かに無視をした。
「…昨日、カレンさんと一線越えちゃったとかぁ?」
「うるせぇよ、」
祐希はソリッドを組み出す。
「うーん、あと少しだったけど。失敗しちゃった。」
隣りにいるカレンが言った。
イクミはにゃはっと笑い、カレンに手を振る。
「えへ、聞こえちゃいましたー?」
「聞こえちゃいました、」
にこっとカレンは微笑み返す。
その微笑みは嫌味なものはなく、無邪気なものだった。
「祐希せんせったら、意気地のないっ。」
「意気地か…そうだったの?祐希?」
「……」
ため息をついて、祐希は肘をついた。
視線の先にはネーヤとこうじがいる。
楽しそうに会話している二人。
ぼろぼろにしたハズのこうじは何時もと同じままで。
穢したこうじは、
キレイなままでソコにいた。
夜に呑まれ
白く苛烈な光りを放つ月よ
時は止まる事はなく
満ちまた千切れるか
狂宴を愛でながら
「アナタハ何処ニ消エタノ?」
(続)
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