…**赤く嘲笑う**…
  〜あいばゆうき〜




とっても簡単なの

思うだけでいいの

にいちゃんも…壊れちゃう?



ボク壊そうとしてる









だるい体を起こす。
乱れた寝巻きを脱ぎ捨てて、絹の反物を着る。
血で濡れたシーツを布団から外して、そのまま外に出た。


汚い、汚い、汚い
これ汚い、汚い、汚い、汚い

キレイに…しなきゃ…


「祐希っ、」

誰?
誰、誰、誰、誰、誰、誰?

「祐希、おいっ!!祐希!!!」

誰だ?
誰だが俺の肩を揺すって…

「祐希!!!!」



ブツンッ





「…あ…あ?」

灰色の髪。
ああ、人形だ。
アイツらの…人形。

「祐希っ!!!」

「っ……」

尾瀬…か。

「大丈夫っすか?ほら…まぁまぁー、引き摺って!」

俺からシーツをぶん取って、ニッコリ笑う。
何だかムカツク。
睨むが、ますます笑うだけで俺はため息をついた。

「また…ぼーっとしちゃった?」

「みたいだな、」

縁側の向こうの庭は強い陽射しに照らされてる。
まだ朝なのにな。

「暑い。」

「あー…確かに、少し動くだけで汗がジトーっとくるし。」

「……汗って…アンタ。」

「あ?大丈夫よー俺は臭くないからーーv」

引っ付いてくる尾瀬を払った。
ヘラヘラと笑う様はムカツクが、確かに他の奴とは違う。
きっと腹割っさいても臭くない。
兄貴と同じ、俺を俺である為の一つ…。
絶対に云ったりしないけど。
コイツの場合は調子に乗るし、それがウザイ。

「むむーそんな冷たい態度なんてヒドイっ!そう思いません?」

「あァ?」

何独り言を…と言おうとした。
人の気配を感じて、それは自然な感じだ。

「冷たい態度は良くないぞ。」

板間の通路をゆっくりとした足取りで兄貴が来た。
3年近く此処から出ていったのに、礼儀作法は身についたまま。
静かな空気のまま、俺の横に立った。
小柄な背は壊れそうだと思う。

「…兄貴、」

「ほら、イクミちゃ…じゃない、イクミに謝れよ。」

「謝れぇーって、昴治ぃーーvイクミちゃんでもいいっすよーーv」

ご機嫌よくこれ以上笑えないくらいの笑顔を浮かべた。

「「アホ、」」

見事に兄貴と声がはもった。











午前中は紅薬作り。
あれは当主になった俺しかできない。
その後、社に閉じ込められる。
闇を見極める為だと云っていた。
後は紅薬を取りくる輩…しかも奪おうとする強欲な者。
そいつらの腹を割っさる。
ズタズタに引き裂いて、汚い処を全部吐き出させる。
それは俺の力でなく、俺の声だけで。

呪詛。

オマエは汚いって小さい頃から云われてたが、本当にそうだと思う。




ずっといっしょだよ……





そう言った小さい兄は一度、消えてった。
それは俺が消えろと言ったから。
数年たって、日ごとに俺が壊れてく。
何とはなしに送った…いや、書こうとしても書けなかった白紙の便箋をアイツの書いた手紙に忍ばせた。
だから来た時は正直嬉しかった。
ふわりといい匂いのする体に触れる。
あの汚い体を触れる手で
あの肉と化させた物を握った手で
もう何人も殺した手で
兄ちゃんに触れた。
兄貴に触れた。
傍にいると言ってくれた兄貴を信じないワケじゃない。
でも俺は俺でない俺だから。
兄貴を壊すしかない。


もういらない…



そう言われたら、俺はなくなる。
離れていく身を引き止める鎖は一つしか知らないから――体に覚えこます事。
もっと別な方法もあるが、それは使ったりしない――人形にしちゃう事。
汚い手で作ったら、泥人形。

「…はぁ……」

地下倉庫。
色々な物を貯蔵している。
奥の鍵のかかった部屋、そこに『器具』とか『薬』とかあった。
最初から強い物にすればいい。
そう聞いたのはアイツらの戯言。
確かに早いが、嫌いでやってるワケじゃないから。
よく選ぶ。



ちゃんと考えて選ぶんだよ




解ってる。
解ってるよ、兄ちゃん。

俺の中の俺でない俺。
幼いまま、素直に記憶の兄に従う。
いい子のようで悪い子。





祐希?

いけない子なの…わるい子なんだって…ボクは

そんな事ないよ、祐希はいい子だ!兄ちゃんが約束する!

やくそく…?






約束…嫌い。

「これで…いいか、」

白粉入れのような赤漆の丸い入れ物と、掌ぐらいの木箱を反物の裾に入れた。
鍵を閉めて、薄暗い周りを見渡す。
ちょうど目についた燈籠を持って地下倉庫を出た。
母屋の渡り廊下を歩き、庭を見る。
時刻は夜半、石庭の白が月に照らされている。
涼むはずの夜は、湿気と生温かい風で暑さを増していた。
軋む離れの廊下につくと、ひそひそと声が聞こえてくる。
使用人だ。
笑みがキモチワルイ奴ら――尾瀬がまだマシなんだと解る。

「…でね、聞こえるの。」

「何が?」

年は30ぐらい。
母屋と離れの掃除をしている奴らだ。
紅薬を知らない身分。

「声よ、声が。」

「嘘、ホントに?」

「帰ってきたら、コレですもの。やはり…ねぇ、」

声?
声……ああ、兄貴のか。
そうか。
わざと大きく軋ませると、そそくさと走りさる音がした。
燈籠を抱え、使用人がいた場所を見る。
ちょうど兄貴の部屋の近く。
障子から零れる洋燈の光は微かに廊下を照らしていた。
ゆっくりと歩いて、部屋の障子を空ける。
明るい部屋の中央――洋燈の下で兄貴は本を読んでいた。

「あ…祐希、遅かったな……何だ…それ?」

本から顔を上げ、俺の抱えてる物に目を向ける。

「燈籠、」

「燈籠…へぇ、懐かしいな。灯すのか?」

座ったまま見上げる兄貴の瞳は少しキラキラしている。
俺は兄貴に近づいて、目の前に燈籠を下ろした。

「灯さねぇの持ってきてどうすんだよ。」

「それも…そうだな、確かに。」

「バカ兄貴だな…本当に。」

「なっ、なんだと!」

怒った表情をして俺を睨む。
人形じゃない証拠。
嬉しくて仕方ない…言わないけど。
燈籠を灯そうとする俺を、さっきまでの怒りは何処へやら、じーっと伺っていた。

「布団でも敷いてろよ。」

「え、ああ…。」

本を持って兄貴は立ち上がり、隅の机に置く。
そのまま押入れから布団を出して兄貴は敷き始めた。
俺は灯篭内にある蝋燭を取り出して、灯る洋燈から火を貰う。
蝋燭を戻し燈籠が灯っているのを確認して洋燈を消した。
それを隅に置き、振り返ると布団を敷き終わった兄貴が所在なさげに正座している。
洋燈とは違い少し揺らぐ灯りの燈籠。
近づくと兄貴は顔を上げて、視線を泳がせていた。

「どうした?」

「な、なんでもないぞ…その、あのさ…」

「やる為に兄貴が敷いたみたいだな。」

想像してしまっただろう事を口に出すと、案の定、兄貴は顔を真っ赤にさせた。
何度もやってるのに、その反応か。

「何言ってんだよ、もうっ!」

そう言ってる兄貴に抱きつくと、ゆっくりだが腕が背に回る。
この頃だ。
こうやって胸に顔を埋めるようになったのは。

「……祐希…あのさ、」

何か話し出そうとする体を布団に押し倒す。
見上げる瞳は微かに揺れてる。

「あのさ、あのっ、その、」

「話なら後で聞いてやるぜ。」

そう云うと、安堵したように息をつく。
何を話したいんだろうか?
俺と話したって楽しくなんかないし、有意義じゃない。
もっと、もっと良い事がある。
教えないと…

教えないとね…にいちゃんに…

体を固くしている兄貴に唇を寄せた。
ピクリと震えるが、ゆっくりと口腔に導かれる。
前、教えた。
舌先で触れ合って、熱い舌が絡んでくる。
ぬめりとした感触は前まで嫌いだったけど、兄貴のは好きだ。

「…んっ……」

唇を離すと舌がちらついた。
まだ口から外まで出てこないが、名残惜しさを感じているのは解る。
兄貴の頬を包むと、ゆっくりと瞳が開かれた。
目元が赤く、頬も染まる。

「……まだ恥ずかしいのか?」

「…そ、そんな事ないぞっ……つーか……」

額にキスして、瞳をあわす。

「今日も勉強しねぇとな…」

瞳が逸らされた。
頬を包んだまま、両の目元に唇で触れる。

「…復習と授業と予習……どれがいい?」

ピクリと体が震えるのが、覆い被さり重なる身から伝わる。
視線が泳ぎ、背に回っている手が服を掴んでいた。
まだ痛いコトはしてない。

「ふ……ふ、復習…。」

そう言った兄貴にキスをしてやる。
兄貴はキスが好きだ。

「…復習はやっておく事だろ。兄貴は予習できねぇんだからさ…、」

「っ、」

襟元から下へ引く。
プチプチと服のボタンが弾けた。

「あ…あの……」

「授業はじめるぜ、」

「痛いの…痛いのは…いやだ、」

「知ってる…。」

知ってる。
知ってる。
首筋を噛むように唇を寄せると体が面白いくらいに跳ねた。

「っん、」

左右に首を振って、離れようとする。
そんな兄貴を押さえつけて、見下ろす。
胸に手を当てると、速い鼓動のもと乳首が主張するように立っていた。
軽く撫でると

「はあっ、」

眉を寄せて、何かに耐えるように声を上げた。
そのまま肩の傷を撫でれば、ピクピクと震える。
兄貴の体の上に跨いで座る。

「重いか?」

腰辺りに座っているから、聞いてやった。

「重くない…」

兄貴の返答に軽く頷いて、裾から持って来た物を出す。
白粉入れに似た赤漆の入れ物と、木箱。
それを布団の横に置いた。

「これが今日の授業だぜ。」

「…っ、」

コクンと息を呑んだのに気づく。
授業と言うより、軽い調教なのだが兄貴はその言葉を嫌う。
仕方なく『授業』と言えば、根っからの『模範生』的な部分が納得したようだった。

「何だか…解るか?兄貴。」

木箱の方は解らないだろう。
だが赤漆の入れ物の方は予想がつくと思った。

「……解らない…」

それは嘘でなく本当。
兄貴は嘘つけないから…。
ああ、まだ穢れてねぇんだと思うと少しイライラする。

「…祐希?」

「復習…したいようだから、復習からするぜ。」

倒れこみ、揺らぐ瞳を覗き見た。

「覚えてるよな?」

「……覚えて…」

「痛いの嫌だろ?」

少し震えて、兄貴は息を呑んだ。
体を起こし、兄貴の横に座る。
のそりと亀みたいに遅く起き上がって、俺を見てきた。
アイツだったら、此処で一回ぶってるだろうな…。
でも俺は殴らない。
そういう痛みは与えるつもりはないし。

「……」

懇願のつもりで見たんだろうか。
だが無視し続けると、ようやく震えた手でズボンを脱ぎだした。
のそのそと脱いで、ズボンを畳み、その下へ下着をたたんで置く。
俯きながら俺の肩に手を置いて、俺を押し倒した。

「これで終わりじゃねぇだろ、」

「わ…わかってる…。」

気丈な声は、けれど上ずってる。
体勢を変えて俺に跨ぐように覆い被さる。
裾をゆっくりと捲って、まだ少ししか反応してないだろう俺のに手を添えた。
息が先端にあたってる。

「……こっちは、こうだろう。」

「んっ、やっ!?」

上がったままの腰を引き寄せて、立っている兄貴のを口に含んだ。

「んっ……あむっ…ん、」

躊躇の間の後、兄貴が俺のを口に含んだ。
少ししか口に入れてないのに気づき、左手で腰を抑えたまま右手を伸ばし顔を押さえつける。

「んぐっ!?」

手で俺のを掴んだまま、苦しそうにくぐもった声を上げる。
気にせず、俺は兄貴のを吸うように舐め出した。

「んんっ!んむ…ん…んんーー!!」

すぐに腰が揺れる。
遅れておずおずと舌が俺のに絡んできた。
戸惑いの残った舌の動きは、正直言って下手だ。

「むぅ、んぅっ、ん!ん!!んんんっ!」

先端を舐め、幹の辺りに歯を当てる。
苦い味が口腔に広がり、揺れて震えている尻に触れた。
尻の割れ目をたどって、色づくヒダに指を当てる。

「う、やあっ!?」

口から俺のを出して、顔を向けた。
太股の間から見える兄貴の顔は可愛らしく歪んでいる。

「い…んんっ!同時は……」

「同時にやっただろ?」

「ひううっ!?」

指を2本同時に入れた。
慣らしもしないソコは狭い。
ビクビクと震える体に気にせず、兄貴の性器を口で弄んだ。
もう何十回もやってるんだから、痛みなどないハズなのに。
まだ兄貴は痛いらしい。

「っ、いいっいたあっ、あああっ…はううぅ、ううっ!」

俺のに頬を寄せて、兄貴は鳴く。
控えめにけれど手で兄貴は刺激していた。
少しは身についたみたいだな。

「んんっ、ん!や、でっ…でっ、で…くぅっん!!」

外からと内部からの刺激で、そうは長くもたない。
兄貴のは呆気なく俺の口の中で吐き出す。
苦い液を飲み干しながら、自分のを擦って吐精を促した。

「ぅ…っ……」

びちゃ、びちゃりと音がする。
兄貴の顔にかかった音。
嫌なのか、嬉しいのか、どっちにも付かない声を兄貴はあげた。
口から兄貴のを出して、穴から指を引き抜きながら身を起こす。
俺が座った状態で、ぐったりしている体を前へやった。
あまり兄貴の背が反らない程度の体制で、尻がちょうどお腹の辺りにくるようにした。
燈籠の光のもと、兄貴の白い尻が映える。
女とまでいかないが、小ぶりで柔らかめだ。

「じゃあ…授業するぜ。」

「っ…」

また震えた。
横から赤漆の入れ物を取り、蓋を開ける。
桃色の透明な塗り物が入っている。
それを一掬い人差し指でとり、身を屈め指を兄貴が見える位置まで伸ばす。

「……これ…」

「いい匂いするだろ?」

「ん……これ…なんだ…?」

「痛み止め。」

そう言って指を尻の方へ持って行く。
そのままヒダに塗りこめる。

「つっ…つめたっ!?」

「ああ、」

返事して、指で掬って周りに塗りこめる。

「っ、つ…つめたっ…ひっ、くぅ!?」

多めに桃色透明の『塗り薬』を指で掬い、それを穴に突き入れた。
逃れようとする腰を押さえつけ、そのまま内部に塗りこめる。

「っ…ひっ…んっ、んんっ」

これくらいでいいだろう。
指を引き抜いて、まだ残っていた『塗り薬』をヒダに塗りつけて手を腰に添えた。
そのまま何もせず、俺は黙った。

「……祐希?」

潤滑油とでも思ったんだろう。
確かにその役目もあるが、

「…っ!?」

効いてきた…

「あ……ぁ…なに…なに、何やった…んだ、祐希っ!」

ジタバタと動こうとしているようだが、もう既に効き目が出ている。
腰は揺れてお腹に尻が擦り付けられた。

「あ……や、やっ、熱い…熱いよぉ…っ」

「痛いの嫌だって兄貴が言っただろ。だから…即効性の媚薬塗ってやった……」

痛いの嫌だって兄ちゃん、言ったの。

「薬なんて…嫌だっ、いや…あっ、ああ、いやあああ!!!」

悲鳴が上げられる。
入れてもいないのに、穴は収縮し女みたいに液体を出していた。

「やあっ、あっ、熱い、いやだっ、あああっ!!いやだああっ!!」

嬌声に混じり、悲鳴と理性の声が上げられる。
部分的に良くする物だから、まだ頭は心は狂っていない。

「やああ、あっ、ああ!ううっ、んんぅっ…はあ、あ、いやだぁ…あっ、あ」

何度か悲鳴を上げ続け、兄貴の声が掠れ始める。
それでも何もしないでいると、切なそうな声はあがりはじめた。

「ぁ…やだ…いやだ……あ…んんぅ、やぁ……ふぅぅ…んっ…」

きっと内部は熱いんだろう。
抑えきれようのない快楽が下肢に熱を集めてるだろうな。
兄貴は布団を握り締め、腰を揺らす。

「やああ…あつい、あついよぉ……」

「嫌だったんじゃないか?」

「っ…」

ビクリと兄貴の体が震えた。
上は着たままだった。
背を見えるように捲りあげ、さするように撫でる。

「っ…っやあっ…あぁ……」

そしていやらしく揺れる尻を見て、俺は目を細めた。

パシンッ

小気味のいい音が部屋に響く。

「っ!?」

片手で兄貴の腰を押さえ、尻を叩いた。
ビクリと跳ねた兄貴は、震えながら俺の方を見てくる。

「兄貴…痛いの嫌だっけ?」

「……祐…希…?」

「痛いの嫌なんだろ?」

パシンッ

「ひあっ!?」

尻を叩くと体が跳ね、そそり立っていた兄貴のが震える。
感じてる。
感じてる。
感じてる。



いけない子、いけない子、いけない子、いけない子





パシンッ

「きゃうっ!」

「痛いの嫌なクセにな…」

震えて逃げようとしているが、効いている薬の所為で動きは暖慢だ。
俺の言葉に益々躯が震える。

「叩かれて感じてるじゃねぇか。」

「ちがっ…ひう!?」

パシンッ

「違う?何処がだよ…バカ兄貴。」

「ちがうっ、ちがっ…ひああっ!?」

パシンッ、バシンッ

何度か軽く叩いた後、強めに叩くと尻に赤く痕がついた。
紅葉みたいに赤く残っている。

バシンッ

「やあっ!?」

「たってるぜ…元気に雫たらしてる。」

バシンッ

「ちがっ……うっ…やあっ……!!」

何度目かの叩きで、兄貴の声がより一層に震えた。
続けてしゃくり上げるような声が聞こえる。

「ひっく…ううっ、やあっ!ちがああっ…!」

バチッ

強く叩いている所為で手がビリビリ痺れる。
兄貴は顔を布団にすりつけ、ボロボロと泣き出していた。

「ううっええっ…ひっく、えっ…えっ…ひあ!?」

「痛いの嫌じゃないんだろ?泣いてもダメだぜ…。」

バシンッ

「ごめなさっ…い、ごめんなさいっ…ひっ…うえええっえ、えええんっ」

謝り、本格的に兄貴は泣き出す。
子供みたいに。

「うええっ、えっ、ごめなさっ…あっ、ひいっ!?」

バシンッ

「ひうっ、え、ええっ…ひっ…ごめんなさいっ、ごめんなさ…ひあ!?」

何度も謝る様は、昔、叔母に怒られ鞭で叩かれた時を思い出させた。
兄貴が怒られて大泣きしたのは一度だけ。
それ以降は只謝り通してた。

「やああっ!?」

叩いた拍子で兄貴が吐精する。
布団を粘ついた液が汚した。

「うう、ひっく、ひっ…うえっ、ええっ…」

兄貴をそのまま引っくり返す。
泣いている顔を見つめると、切なそうに俺を見つめた。
太股を撫でながら頬にキスをしてやる。

「ん…ん……」

震えながら兄貴の頬が染まる。
それを見つめながら、両足をかかえて兄貴の体を折り曲げた。
瞳が揺れて、決心したように兄貴は目を閉じる。
零れる息は待ちわびている響きがあった。
けど、まだ終わってない。



いたい、いたい、いたい、いたいよっ

うるさい、黙れ!

どうして、こんなコトするのっ

穢れた子め!





「ゆう…き…っひ!?」

木箱から出したのは、べっ甲細工の『張形』。
カタチは性器を形どり、いわばバイブに近い。
昔からある玩具…ホントは紅い紐を足の踵に括って使う物だ。
だが、今回はバイブと同じように使う。
これは栓を抜いて中にお湯を入れる物だが、お湯なんて持ってきてない。
『塗り薬』を塗りつけ、収縮する穴に突き入れた。

「いっ、ひぎゃああっ!?」

湯で温めておかなければ、冷たいのは当然だ。

「い、や、やだああああっ!!やだああっ!いやだ!やあっ!!」

兄貴が玩具とか穴に入れられるのが嫌いなの知ってる。
知ってるからやってる。

「いやだっ!は、入っちゃっ、入るっ!!い、ひぎぃぃぃ!?」

逃げようとするが、細い腰を抑えて込んだままなので両手がバタバタと動くだけだ。
思いっきり突き入れると、体が大きく跳ねた。

「いやだぁあ、やああっ、あぐっ、うううっ!いやだあああああ!!!!!」

悲鳴。
助けを求めるように手が宙を掻き、シーツを掴んだ。

「嫌なのか?」

何度も首を縦に振る。

「ひぎゃああ!?」

ずぶりと『張形』を抉るように、もっと奥へ入れた。
跳ねる体を見つつ、抜き差しし始める。

「ひっ、やだああっ、やあ、ぬ、抜いて…あぐうううぅ!?」

「たってるぜ、いいんだろ?」

「ちがあああっ!!いやああっ!!やだあああ!!!」

混乱も混じり、喚き泣き出す。
先ほどの涙の跡を消すように、また涙が零れた。
もし、兄貴が此処を出ていかなければ。
遠い親戚の所に逃げなければ…叔父か他の輩に、こうされてた。
多分ではなく、確信だ。

「やだ、やだあっ…あう、ぐううっ、やだああああ!!!」

「感じてるな…俺じゃなくても、いいんじゃねぇ?」

その言葉を吐いた途端、兄貴の瞳が見開かれた。
左右に首を振り、否定しようとする。
だが体は裏切るように液を零していた。

「ちがうっ、ちがうっ!ちがあっ…ひぎっ!?い…ちがあぁぁ…!?」

「他の奴呼んで、ぶち込んで貰おうか…ここに。」

ぐっと『張形』を押し込む。
体が跳ね、兄貴のから白濁の液が飛び散った。

「やだあっ!!やだ!!ちがあ…ちがうっ、ちが…ひぐっ!?」

「何が?」

手が俺の方へ伸びる。

「ちがあ…ちが……やああっ、あっ…」






祐希、こっちだよ






オマエは此処にいろ







ねぇ、僕は何処へ行けばいい?









俺は兄貴の手を取り、『張形』を出してやった。
折り曲げた身を戻させると、躯が弛暖した。
まだ泣いている兄貴を抱きしめると、苛めた俺に腕が回る。

「…ちが…ちがう……」

「知ってる……」

「ちが…う、ちがっ……ひっく…う、ええええっ……」

混乱による一時退行。
俺…俺でない俺。
俺が兄貴を
ボクが兄ちゃんを壊そうとしてる。

「ちが…ちがうんだ……ぁ、あつい…ちがうけどぉ…」

「ああ、他の奴がいいのか?」

「ちがっ…祐希…祐希が……祐希だけ…なんだ、祐希だけ、」

抱きつく身体は俺を包む。
そっと剥がすと、濡れた瞳を俺に向ける。
汚くなるハズなのに、全然汚くならないね。
俺の中で俺が囁き、俺がそれを聞く。

「祐希…ゃ…」

頬を撫で、腰を掴んだまま俺のを宛がう。
体が震え、それは歓喜が混ざっていた。
蠢くソコへ間を入れず、突き入れる。

「んくぅ!?」

鳴いた。

「はあ、あっ…くぅ!?」

そのまま揺らすように動くと、兄貴は可愛らしく鳴いた。
他の奴にやらせる?
そんな事させるワケない。

壊せ、壊せ、壊せ



いけない子にはお仕置き
わるい子には罰




「兄ちゃん……」

頭が痛い。
兄貴を抱き寄せて、唇を貪りながら、焦らすように腰を動かした。

「はぐっ…んむぅ、んんっ!んー…んんんっ」

絡んだ舌は俺の頭を痺れさす。
しがみつくような手は爪をたてないように気遣っているのが微笑ませた。
兄貴だ。
兄貴だ。
兄ちゃんだ。

「はうっ…ひゃ、ああっ、あ、ふうう…んん、ん!?」

ガクガクと兄貴の体が痙攣しだす。
立つ兄貴のを動きにあわせて擦ると、声は一層大きくなった。

「はぁ…あ…」

内部の締め付けに息が漏れる。

「ふあっ、あううう…はああっ、ゆ、ゆうきぃぃ…」

「外が…いいか?」

「中…なか、なかぁぁ……」

舌たらずな言葉を吐く唇を吸う。
ビクビクと震えて、内部の締め付けが強くなった。

「ふああ…あっ、ふぅぅ…んぅ……」

白い視界が、いつもと同じ俺を包む。
ああ、壊れる。
俺が…ボクが…。













ニコニコと兄貴が笑って、俺の横に座っている。
前には持って来た燈籠。
肩に布団をかけて、子供の頃のように夜更かししてる。

「でな…イクミが、これ持ってきてさ。」

畳の上にばら撒いたのは、橙の光のもと煌くオハジキ。
色とりどりのそれに触れた。
冷たい。

「女の子じゃあるまいし…て言ったんだけどさ…結構、キレイだったから。」

「キレイ…だな。」

「だろ?そうそう、祐希はコレの遊び方知ってるか?」

首を左右に振ると兄貴は得意気に微笑んだ。
その頬にキスすると、軽く頬を兄貴は染める。

「兄貴は知ってるのか?」

「え…ああ、イクミに教えて貰ったんだ。」

頬を染めたまま、オハジキに触れた。

「どうやって?」

聞けば、ますます嬉しそうに笑う。

「えっとな、」

二つのオハジキの間に指で線を引く。
片方を人差し指で弾いた。
カツンと音を立て、名の通り片方のオハジキが弾かれる。

「今みたいに当たったら、自分のモノになって多く取ったら勝ちなんだってさ。」

「ふーん……」

真似てやると、別のオハジキに当たる。

「別なのには当てちゃダメだって……」

軽く笑みを零した頬に手をそえた。
首を少し傾げて見る兄貴を見つめる。




兄ちゃん…にいちゃ……






「…え?」

「何だ?」

「いや、今…何か言わなかったか?」

「何も、」

瞳は灯篭の光の元で煌くオハジキに向けられた。




兄ちゃん……タスケテ

此処カラ…出シテ……
















ざわつく。
森が風が不穏な動きを知らせた。
ざわつく、ざわつく、ざわつく。
声が聞こえ、俺に取り巻いた。

タスケテ、タスケテ、タスケテ

嫌な感じ。
走って、その感じのする方へ行く。
草をかきわけて

「はぁ、はぁ、」

横で息を散らす音を聞く。
この走りでは間に合わない。

「遅い、」

息を散らす奴の腰を抱き、そのまま抱えて跳躍した。

「祐希っ!」

木々の枝を跳躍しつたう。
不穏な動き。
聞こえる声が弱まっていく。

「祐希、」

横で俺の名を呼ぶ。
抱えて辿りついたのは、俺がいつも閉じ込められる社。
格子の戸を開け、中へ駆け込んだ。

「っ……」

血匂。

「い…イクミーーーーーー!!!!!!!」

悲鳴。








…祐希……昴治くん…戻ってくるよ

……

ね……だから…泣かないで

……

泣かないでよ……泣かないでよぉ…









「イクミっ!!イクミ!イクミ!!!しっかりしろ!!」

遠い…遠くなってく。
声が声が……笑い声。
社の外から聞こえてくる。
行かなきゃ……


「イクミ!!いやだ…イクミちゃん!!!」


愚かな人に罰を。
与えないとね…


そう……

呪われよ…呪われよ






オマエ、イラナイ…壊レチャエ









そう…俺でない俺がボクを消す






赤く嘲笑う〜あいばゆうき〜(その後・祐希編)

(終)
これを書いている辺りから、
昴治より祐希が好きなのでは?と言われはじめる…(汗)

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