**桜迷宮
淡く宿りし
花の道
迷子の子は何処へか
甘い匂い、いつもなら春だと心和ませられるハズだった。
けれど、その匂いさえ憎悪と嫌悪が昂治に取り巻いた。
泣くには情けない。
嘆くには悔しかった。
昨晩、昂治は祐希に犯された。
弟である相手に組み敷かれ、抵抗も空しく
痴態を曝け出さられた。
――なんなんだよ、もうっ!!
怒りは身体の鈍痛に苛まれ、
ため息をつかせる。
桜、サクラ
ひらひらひら
「あら、どうしたの?顔色悪いわ。」
階段を降りるなり、過保護な母――律子が歩み寄って
来た。心配げに声をかける母親に昂治は目を逸らす。
「ちょっと風邪気味なだけだよ。」
「そうなの?それは大変だわ。」
「……」
母親に自分は犯されました。
しかも弟にです。
なんて言えるわけがない。
言う気もない。
鈍痛を耐え、リビングに向かった。
朝独特の日差しが入り、部屋は誰もいなかった。
「…母さん、祐希は?」
多少、怒り口調は仕方がない。
当の母親も気にするふうもなく、答えた。
「朝、出かけたみたいよ。」
気のないセリフ。
変な胸の痛みを感じながら、昂治は内心で
安堵した。
当たり前だが、今は顔なんか見たくなかった。
力は敵わないだろうが、罵るだろう。
オマエナンカ嫌イだと――。
一息ついて、席に座る。
用意された朝食は温かそうな湯気をたたえる。
こんんがりトーストにふっくら卵焼き、
新鮮なサラダ、そして牛乳。
近代的な朝食は美味しそうだが、どことなく
冷たい感じを漂わせている。
昂治はそんな気がした。
「いただきます。」
「めしあがれ。」
ニコニコ顔の母親を見やり、牛乳に手を伸ばす。
その白さが変な想像を掻き立て、嘔吐感を感じ
昂治はその手をトーストの方に向けた。
――ムカツク…
牛乳だけで、無理矢理飲まされた“祐希の体液”
を思い出されたのだ。
ぎりっと奥歯を鳴らし、横の席を見た。
本来、ここに座るべき人の姿はない。
――ん?
「母さん、」
「何?」
「……祐希の分は?」
「ないわよ、」
母親の笑みに一種の悪寒を感じた。
その感覚は昂治の表情を顰めさせる。
「どうしたの?」
「…別に、」
いつもの事だ。
昔はこうでなかったが、母親は祐希に対する
"愛情"というモノがあまりない。
本人である祐希の態度の所為もあるかもしれない。
だが――。
「……」
気分が沈む。
先ほどまでの怒りなどどうでも良いくらい。
事実、どうでも良くない事なのだが
目の当たりにする環境に昂治は唇を噛んだ。
「ごちそうさま、」
「あら?全然食べてないわよ?」
「…いらない、ちょっと食欲なくて。」
席を立ち上がり、腰に手をやりながらドアまで歩く。
「残ってた課題しないといけないから、」
部屋に来るな、
邪魔するな
そういうニュアンスを言外に添えて。
昂治は階段を上りだした。
自分に過保護な母親は
「無理しちゃダメよ。」
そのニュアンスを受け取ったかは定かではないが
昂治を見送った。
サクラ、散る、散ル
満開の刻
ひらひら、ひらら
解放的な空が、ここは宇宙ではないと認識させる。
フラフラと歩いていた祐希だが、ふと目に入った
この場所に佇んでいる。
満開の桜が回りを囲み、満開であるからこそ散って
いく花びらが地を隠し。
ゲドゥルドフェノメーンの所為で地球の環境は
まるっきり悪いというのに。
ここの桜は気味が悪いほど綺麗に咲き誇っていた。
白に近い桃色の花びら。
時に嵐のように、時に俄か雨のように散っていく。
こんなに散れば、すぐに葉桜になりそうなのだが
その様子もなく――。
「……」
何処から歩き、ここまで来たのか。
祐希は手ごろな桜の幹下に腰を下ろした。
昨夜、兄を凌辱した。
苦しみ顔に胸を痛め、それでも征服感が心を
満たしていった。
後悔はない。
もともと、そんなに好かれてはいないと祐希自身
思っているのだから、今さら嫌われても
多少の痛みが賄うだけで平気だった。
ただ手に入れた。
心は無理だとしても、躯は手に入れられた。
兄の事だから、きっとこの関係を続ける事も
可能だろう。
蔑ずみ、罵りながら。
受け入れていくだろう。
ココロはオマエなんかに渡サナイ
そう揺らめく瞳を見ながら――。
自分の体を抱きしめ、祐希はうずくまった。
もう嫌われていると解っているのだが、
さすがに今は罵られたくない。
矛盾している感情に目を顰め、そして瞑った。
昂治を手に入れた。
錯覚である事実に身を任せ、
今は眠りたかった。
ベットに鈍痛に軋む体を寝かせ、
昂治は考え込んでいた。
「……」
長い袖から覗く、自分の手首。
そこには赤い痣が残っていて、それは
犯された事を思いだすのに十分過ぎた。
布団に顔を埋め、息を吐いた。
桜、サクラ、さくら…
「あれ?」
見れば、目の前に祐希がいた。
「ここは?」
笑っているようなその顔に、怒りが甦る。
「おまえ、どういうっ…」
息が詰まる。
「さよなら、」
無機質な声が掛けられ、
祐希はそのまま背を向け歩き出した。
「おい!!」
昂治が一歩前に踏み出した途端
ブワッ
仄かに光る、桜の花びらが一面に舞った。
「祐希…?」
舞っていた桜が地に落ち、
そこには誰もいなかった。
「!?」
映ったのは、布団だった。
少し乱れた息を整え、昂治は身体を起こす。
――夢…か…
額を抑え、少しの頭痛に耐えた。
部屋は薄暗い。
時計を見れば、11時過ぎだった。
「……」
ベットから降りて、立ち上がった。
アコーディオンの向こうに人の気配はしない。
安堵しながら、昂治は部屋を出た。
階段を降り、居間の電気が点いている事に気づく。
ドクドクと心臓が緊張で速く鳴る。
平然を装い、居間へ入った。
誰もいない。
部屋は電気が点いているだけだった。
食卓の机には夕食にラップが掛けられている。
そして小さな紙切れ。
部屋には誰もいない。
――なんだ…
変な寂しさと、残念な感情が入り乱れる。
ココロが軋むほど痛い。
――なんだよ…
怒りとも言えない、激情。
「なんなんだよーーーーーー!!!!!」
バンッ
机を叩き、その場に座り込む。
情緒不安定なのか、らしくない。
カチ、カチ、カチ…
時計の音が暫くして、無常に聞こえる。
「……」
ガチャッ
物音がした。
「!!」
歓喜に似た感情が沸き起こって、昂治は
立ち上がった。
「あら…ただいま、起きてたの?」
母親だった。
先ほどまでの歓喜に似た感情が消える。
「……ああ、」
表情には出ないものの、空虚感を覚えた。
誰を待っていたのか。
誰だと思って歓喜したのか。
もう解っている、当たり前の答え。
「母さん、祐希…知らないか?」
「知らないわ、ほっときなさい。あんな子は。」
諦めたような声。
そして向けられる微笑みに寒気を感じる。
「ほっとく?…もう…1時近いんだよ?」
「何処かに泊まってるんじゃないの?」
母親の愛情は、ほとんど自分に向けられている。
「何か事故とか遭ってたら、どうすんだよ!!」
昂治は声を上げ、母親を追い抜き外に飛び出した。
暗い外は、電灯と月で道を少し認識させた。
靴を履いていない
――どうでもいい、
体が痛い
――どうでもいい、
昨夜の事を許さない
――そんなの嘘
どこに、どこに?
ひらひらひら…
「……」
周りは真っ暗。
祐希は頭を掻きながら、その場から立ち上がった。
桜は月明かりに妖しく照らし出されていた。
「はぁ…はぁ…」
走り通して、昂治の息は切れ切れだった。
ふと目に入ったその場所に、
昂治は足を踏み入れる。
夢と同じ、桜。
異様なまでに、咲き誇り囲んでいた。
不気味なまでの静けさと秀麗さ。
自分がシャツにズボンという軽装な所為もあり
肌寒さがよけいに感じられた。
月明かりで薄紫に仄かに光る。
「……」
何処か知らない場所に連れていかれそうな
感覚も宿り、キョロキョロと周りを見渡した。
そんなのありえない。
だが、実際にその状況になっていた。
自分は何処からココへ入ってきたのか、
何処へ行けば出れるのか、
全く昂治に解らなくなった。
桜が自分を囲み、そして迷わせた。
静かにひらひらと花びらが散っていく。
花びらで埋め尽くされていく地は、淡く白く。
「っ…」
喉奥がひゅっと鳴った。
――これは…恐怖だ…
数回だけ味わった、底知れぬモノ。
奥歯を噛み、
「祐希!!!」
叫んだ。
裏返った声は情けなく、昂治は目を瞑った。
――何…やってんだよ、
ため息をつき、瞳を開けた。
「っ!?」
昂治は息を呑む。
そして相手も目を見開いた。
「「なんで…ここに…」」
声が重なり、そして止まる。
目の前に祐希が立っていた。
散る桜の中、いつのまにかいたのだ。
祐希の方からすれば、いつのまにか
昂治が現れたのだ。
「……」
祐希は目を逸らした。
きっと罵られるだろう。
先ほどまで、満たされていた感情さえなくなって。
けれど何も言ってこない。
――アンタはいつもそうだ。
そうやって、目を背けるのだ。
見下すように祐希は昂治を見る。
けれどソコにあったのは、安堵したような表情だった。
すぐにその表情は憤怒へと変わったのだけれども。
「あにっ…」
「今、何時だと思ってんだ!!
こんな夜遅くまで、ほっつき歩きやがって!!!」
遮るように昂治は怒鳴った。
「別にアンタには関係ねぇだろ…」
「心配したんだ!!オレは!!!」
何とも思っていないような母親の態度に
寒気と憤怒を味わって。
たかが夢の事と今のこの桜と重ねて。
「謝れ!!」
「説教かよ!!人の勝手だっ!」
「謝れよ!!謝れったら…許してやるから、」
呆然としていた祐希に、包みこむように抱きついた。
混乱しているらしい祐希だが、それでも
昂治の背に手を回す。
――これは夢か?
小さな息づかいと、その体温は
紛れもない、現実だ。
「…兄貴?」
無言で昂治は顔を向ける。
切なそうな、怒っているような表情。
「悪かった…」
自然と言葉が出てきた。
昂治は目を伏せ、祐希の服を掴んだ。
「……嫌いになってたさ…けど、
昔みたいに…戻りたかった……」
ゆっくり顔を上げ、祐希を見る。
憎いとさえ思っいていたハズなのに。
ぶつけられた感情は
自分の感情を揺さぶった。
「けど…オマエが望んでるんなら…
俺と同じなら…その先に行ってもかまわない。」
――その先?
仲の良い兄弟に戻り、その先へと――。
「それって…」
頭の回転が鈍る。
何と言えばいいのか解らず、祐希は昂治の
肩口に顔を埋めながら強く抱きしめた。
昂治は少しもがきながらも同じく、祐希の
肩口に顔を埋めた。
甘い匂いが広がる。
どれくらい抱き合っていただろうか。
ふと祐希が視線を落すと、昂治が靴を履いて
いないコトに気づく。
「…兄貴、靴…」
「え?」
互いにそろそろと体を離し、昂治は自分の足元に
目を向けた。
――飛び出して来たんだっけ…
「…そんなに俺に会いたかったのか?」
「な゛…ち、違う!!」
揶揄うような口調に昂治は顔を真っ赤にさせる。
そして怒ったような顔をして、俯いた。
「家に帰ろう…」
答えないでじっと見ている祐希に昂治は軽く微笑む。
「帰ろう。」
「……」
返事をせず、祐希は体制を低くする。
「どう…した?」
「おぶってやる…早くしろよ、」
「はぁ?何言って…」
「アンタ、靴履いてねぇだろ。」
「まぁ、そうだけど…いいよ、別に、」
「早くしろ、」
数分、言い合うが、体勢を変えない祐希に昂治は
しぶしぶ折れた。
肩に腕を回し、昂治が背に体重をかけると
祐希はひょいっと軽く背負い立った。
――情けない…
そう思うのだが、少し気恥ずかしい嬉しさもあって
その矛盾に昂治は困った。
歩き出す祐希に声をかける。
「重く…ないか?」
「軽い、」
「そう…」
軽いと返されるのも何だが、負担はあまりかかって
いないのに一応安堵する。
桜の花びらが散っている。
迷ったかのように思わせたこの場所も
簡単に抜け出してしまった。
――そういう…もん何だろうな…
思いや苦しみ…その歓喜。
家の玄関に灯りは点いていた。
下ろすように要求するが、祐希は下ろす事なく
玄関の扉を開けた。
「心配したわよ、何処に…あら、祐希。」
「……」
母親の態度に傷ついていないか。
随分前から、こんな感じなのだが今さらながら
昂治は心配する。
「母さん――」
昂治が話そうとした時、祐希は動き出した。
静止の声も聞かず、そのまま階段を上り部屋へ
入っていく。母親の慌てて、その後を追うのだが
部屋に入るなり、祐希は鍵を閉めてしまった。
「……おまえな…」
「別にいいだろ…今日くらい。」
「今日くらいって?」
アコーディオンカーテンを過ぎ、昂治の部屋に入る。
少し乱れているベットに昂治を下ろした。
すぐに昂治は祐希に目を向ける。
祐希はアコーディオンカーテンを閉め、
簡易な鍵をかけた。
「ゆう…き?」
「なぁ、同じなんだろ?」
「同じ?」
祐希が俯きながら、ベットに座った形となった昂治に
近づいた。言葉を選んでいるような感じを思わせる。
「……同情はいらねぇ、」
「祐希、」
肩を掴まれ、後ろへ倒される。
目を向ければ、視界いっぱいに祐希の顔が映る。
「ど…同情でこんな事するかっ…」
それは答えには遠い。
けれど顔を真っ赤にしながら言う昂治の心情は
手にとるように理解できる。
唇が近づいてくる。
兄弟で…ましてや男同士で。
そう思う一般常識は、もうどうでも良く思えて。
――いけない…
兄としての理性は、そう制すのだが
体に無理矢理覚えこまされた熱――眠っていた熱は
それを断ち切るほど溢れ出す。
嫌悪、嘔吐感を味あわせた行為も今は、何か満たされる
ような錯覚が広がっていた。
「…ゆ…うき…痛いのは…」
だがそれと同時に、思い出される苦痛に震える。
服を脱がしながら祐希は微かに微笑んだ。
「昨日の事…忘れるくらい“よく”してやる。」
その言葉に昂治の体は震えた。
「んっ…ふぁあ…くっ…」
ゆっくりとした愛撫が昂治に与えられる。
何処でこんな事を覚えてきたのだろうかと
一種の嫉妬にさえ似た感情が心の片隅に宿る。
「あんま声出すと…聞こえるぜ?」
「んんっ」
昨日がどれほど乱暴で性急だったかを
思い知らされているようだった。
行為の目的は同じであれ、心情が全く違う。
――おかしくなりそうだ…
後ろから抱きしめられながら、胸を撫でられる。
唇は肩を舐め、息をかける。
「ふっ…ん…ああ…」
掠れた甘い声に、気恥ずかしさを感じる。
だが漏れる喘ぎは止められなかった。
「くうっ!」
乳首を両方抓られる。
背を伸ばし、離れようとするが身じろぐくらいしか
出来なかった。
強く弱く抓む指を離させるように、昂治は手を
掴むのだが逆に乳首を引っ張るようになってしまう。
「ひゃあ!?」
「兄貴…」
「うう…あ」
下を見れば、自分のモノが猛っているのに
底知れぬ羞恥を覚えた。
後ろから抱きしめられている形なので、
その自分のモノに添うように祐希のモノがあった。
「兄貴…触ってみろよ…」
「ばっ…バカか…おまえ…んぅっ」
耳を舐められ、昂治は身体を震わす。
「きもちよく…させろよ、」
「…ん…」
そろそろと昂治の手が下半身に伸びた。
その動いた手を祐希は握り、自分のモノと昂治のモノを
一緒に握らせた。
「やっ!?」
「いやじゃねぇだろ?」
「やめっ…あう、」
互いの熱が快楽を味あわせ、先走りが滴り
その滑りがまた快感をもたらす。
昂治の手が上下に動き出したのを見やり、
胸を愛撫する。
「ふあ…あ、ああ…んぅあ…」
きちゅ、くちゅ
水系の音が聴覚を刺激する。
祐希は息を吐き、昂治の肩に唇を寄せる。
少し痩せた右肩を舐め、追い立てた。
「あ、で…で…ああう!?」
びゅくっ
白濁の液が吐き出された。
その液は昂治の上半身を汚す。
そしてその反動に刺激され、遅れて祐希が
液を吐き出した。そして尚、昂治を汚した。
「ふああ…あ…」
ぶるぶると痙攣している体をゆっくりと前に倒した。
射精後の倦怠感で意識が少し飛んでいる。
その間に、昂治の双丘を割った。
「いやだっ!?」
けれど、すぐに昂治は意識を戻す。
離れようとする体を抑え、秘部を見やった。
赤く充血し、昨晩の無理を思わせた。
「…痛くしないようにするから…」
「やだ…痛い……」
「一つになりたい…」
それは本能的なモノだ。
例え無理させても一つになりたいというのは。
何も言わず、昂治はじっとしている。
「……俺だって…」
声が震えている。
それを聞きながら、祐希は秘部に唇を寄せた。
「なっ!?ばかやろ!!!」
「痛いの嫌なんだろ?」
「汚な…っうんん!?」
ヒダをなぞり、中に舌を突き入れる。
キツイ締め付けと熱い内部。
すぐに入れたい衝動を抑え、内部を解していく。
「うくっ…あ、ああ…うんっ!?あ…」
耐えているらしい昂治に、笑みが零れる。
受け入れようとしてくれているのだ。
「ん…ひゃあ!?」
体が大きく痙攣しだす。
舌と一緒に指を入れたときだ。
内部でこりっとした部分がある。
そこに触れてみると
「はああん!?」
萎えていた下半身が反応しだしている。
「やっ…痛っ…んぅあ!?」
ポタポタと先走りが布団にシミを作っていく。
いつのまにか上がっている腰を掴み、
舌を引き抜きながら体を反転させた。
「はあ…んう、」
唇を寄せながら、内部に入れてままの指を
かき回すように動かした。
「んんっ!?ん、」
苦しげながらも、舌が絡んできた。
祐希は唇を離し、昂治を見つめた。
「…兄貴…」
「んっ…はあ…ゆう…き、」
情欲に溺れている瞳は妖しげに揺れる。
「……」
黙って見つめれば、昂治がそろそろと手を伸ばす。
引き寄せられるように、祐希はまた唇を寄せた。
「…ん、んんっ!!!」
そしてゆっくりと内部を凌駕していく。
熱は燃えつくさんばかり、
そのモノは引き裂かんばかりに入ってくる。
「はぁ…ひぎゃっ!?」
唇を離し、反り返った喉に噛み付く。
ビクビクと震える体は汗がにじみ始めた。
硬くなっている体へ空いている手で愛撫しだす。
「ふぅ…ひっ…あ…うんっ!?」
最後は無理に奥へと捻じ込んだ。
暫く落ち着くまで、祐希はじっとする事にする。
「…はあ…ぁ…痛っ…」
「はぁ…はぁ…」
内部の締め付けは、苦しくも快感を与える。
熱に焼け尽くされるのではないのかと
祐希は思った。
「…んっ…ゆ…き…」
痛みに歪み、涙でボロボロの顔が向けられる。
こんな顔をさせているのが自分であると
一種の征服感を感じた。
「平気…か?」
ふるふると横に首を振られる。
「…動いていいか?」
だが、その返答に昂治は目を瞑りながら
首を縦に振った。
動かれるのは苦痛を伴うだろうけど、
――欲しい…
何かを欲していた。
「兄貴…」
昂治の腰を抱きながら、祐希は動き出した。
ぐちゅ、ぎちゅ…
いやらしい音とが響き、体がキシキシと鳴っている
ようだった。
「ひっ…あ…んん!?あ!!」
すでに自分が汚した体なのだが、
ひどく新鮮に思えた。
汗や精液で汚れた体。
「ふあ…はがっ!?あああ!!」
反応が過度的なモノになる。
突いた所がいい場所だったのだろう。
ソコを重点的に責めていく。
「はあ…ひあ…ん、あ、ああ、あ、」
甘い声が上がりだす。
内部が誘い込むように動き出しているのが解った。
太股から滴る、血が布団にシミをつくっていく。
「ん、ああ…ゆうき、ゆうき…あ、あうっ!!」
そそり立つモノを掴み、祐希は動きを激しく
させていく。
「ひああ!!あ…う…んん!あ、あ…あ、」
昂治がしがみついてきた。
先走りが祐希の手を濡らす。
「ゆ…うき、ゆう…好き…だ…」
「兄貴…俺も…」
漏れる声は真実。
禁忌に彩られたこの思いは、
「ああっ!!」
「っ!!」
止める事さえせず、二人は貪った。
「あ…ふぅ……」
全て溶け込んでいるように。
カーテンの隙間から光りが漏れてきている。
それでも尚、裸のままであるのに昂治は苦笑した。
――何してんだろ…な
体中、赤い痕が残され、まだ内部にモノが入っている
ような感覚が残っている。
互いに疲れているのだが、まだ足りないとでも言うように
祐希の手は揶揄うように触れてきている。
「祐希…」
呆れたような声をかけて、祐希の頬に触れた。
「…母さん…何て言うだろうな…」
「目くじら立てんじゃねぇの…」
気のない声と、向けられる瞳の矛盾に昂治は微笑む。
行為は痛みを賄ったけれど、内容は全く違かった。
「怒るだろうな、」
「…アンタ…」
「認めてもらわないとな…母さんくらいには。」
一般常識としての了見が、自分を責めない事はない。
けれど、本当にどうでも良かった。
変に熱い独占欲が自分の中に沸き起こっている。
「無理だろ、そんなの。」
「それでも…傍にいれるだろ?」
兄弟だから。
言外に濁し、昂治は祐希に寄り添った。
寄り添ってきた昂治を抱きしめ、背中を撫でる。
「兄貴…変わったな、」
「おまえも…な、」
二人は抱きあう。
ドアの鍵は開いている。
もうじき、母親がココへ来るだろう。
桜が散りし
淡きこの道
二人の迷子よ
何処へか
永久に迷いを
誓いし迷子
(終) |