+…I miss
それは予想なんでできない事だろう。
たぶん、きっと…
日々の生活は穏かなもので、忙しさはあるけれど心にユトリはある。
だから、こういう風に手軽に話掛けられる状況はいいものだろう。
「な、頼むよ!」
「……」
そう言われても困る。
昴治は目の前にあるモノを見て思った。
ちょうどリフト艦に用事のあった昴治は、たまたま此処に来る。
リフト艦にいたのラリーとマルコだった。
それに前にある箱詰めのワイン。
「俺一人じゃ飲みきれないし…」
「俺でも無理だな。」
「な、だからさ。昴治、一緒に処理手伝ってくれ!」
昴治は腕を組んで考え込んだ。
どうやらマルコの親から送られたらしいワインは4本。
一応、大人もいるリヴァイアスは規律はある程度厳しい。
ワインであるが、お酒である。
未成年の彼にとって飲酒は“規律違反行為”であろう。
「親から送って貰ったんだろ?部屋にでも置けばいいんじゃねぇ?」
ラリーの提案も、けれど同居人が規律の厳しい者で告げ口されると苦々しく言った。
ここで初めて知ったのは、ラリーやマルコの住んでいた場所ではワインは水がわりに
飲んでいたらしく、お酒という観念はないという事。
(…でもなぁ…)
昴治の記憶の中で、一度お酒を飲んだことがある。
アレをお酒と呼んでいいのかは別としてだ。
酔った後の事を覚えていない昴治に、あのパーティに参加していた全員が
もう酒を飲むな!
と言っていた。
「昴治!頼むよ!!」
「……」
元から人に頼まれ事を断る事ができない昴治は、差し出されたワインを受け取った。
「やっほーー!今日は早いねぇー。」
「早いね、祐希。」
リフト艦に続く通路を歩いていた祐希にイクミとそしてカレンが駆け寄った。
祐希は無視するように何も云わない。
「月曜日って大抵、重役出勤じゃないっすかー。なのに今日は定時!」
「うるせぇよ…」
にゃははと笑うイクミに祐希は不機嫌極まりない顔をする。
そこにカレンはニコリと笑って覗き込んだ。
「何かあったの?昨日、」
誰かと。
その言葉がないのは、きっともう核心を知っているからだろう。
舌打ちをし、スタスタと歩くスピードを祐希は上げた。
「あ、逃げたっすねぇ。」
「逃げられたわね。」
カレンとイクミは顔をあわせ、そして祐希の後を追いかけた。
いつもと同じ日常で、リフト艦の入り口が開きいつもと同じように作業が始まる筈だった。
「お!いくか!」
「ああ。相葉昴治いかせていただきます!!」
操縦席に寄りかかっているラリーとマルコの前に昴治が立っている。
目を顰める祐希と首を傾げるカレンに、けれどイクミはみるみる内に顔を青ざめさせていく。
「うわっ、ちょ!それ!!!まさか!!!!待ってくださいっす!!!」
「あ?尾瀬??どーかしたか???」
駆け寄った時には、昴治は持っている瓶を景気よく空けていた。
「「おおーーー!」」
パチパチパチと拍手するラリーとマルコにイクミは恨めしげに見る。
「あのーもしかして…昴治クンがお飲みになったと思われる液体はお酒だったりします?」
「そうだけど……」
「わっ!バカ!!尾瀬、まさかちくるのか?」
額にイクミは手を当て、溜息をついた。
「何て事を……あ、昴治クン?」
イクミがオロオロしている理由が解らない祐希とカレンは遅れて近づく。
昴治は持っているワイン瓶を見て、そしてイクミを見た。
「あーー大丈夫ですかぁ?」
「……あァ?」
目が据わっている。
気遣うようにニコニコと笑うイクミに祐希は目を顰める。
「アンタ、何ヘラヘラしてやがんだよ、」
「わ、わっ!祐希、あんま事を荒げないでくださいです!」
「ヘラヘラだとぉ?何言ってんだよ、バカが、」
ボソリとドスの効いた声で昴治が言う。
それにさすがに、何か危険だとラリーとマルコは把握した。
「ヘラヘラじゃない!ニコニコしてるって言うんだよ!」
「あァ?」
昴治の発言に少し青筋を立てる祐希だが、ズカズカと近寄ってくる昴治に
胸倉を掴まれ押し倒された。
「もう酒ねぇぞ!!どーすんだよ!!何とかしろ!!」
「…おい、尾瀬、説明しろ。」
「あー…昴治さ…酒癖悪いんすよ、しかも絡みで。」
「確かその話、あおいさんに聞いたような…」
祐希は溜息をつき、昴治を引き離そうとした。
普段なら意図も簡単に突き飛ばす事もできるし、逆に押し倒すこともできる。
現に夜、押し倒したりしているが――それは別問題として、今の昴治はビクともせずに
ぐぐっと祐希を押さえつけている。
何処にそんな力が思う前に、体に圧し掛かる躯が上手く起き上がれないようにするツボを
押しているようだった。
「祐希!!酒持って来い!!!」
「…持って来いって命令するヤツが圧し掛かってどうすんだよ!
それくらい解らねぇか、クソ兄貴が、」
「あァ?いつもはデロデロのクセに!何アホな事ぬかしやがる!!」
「デロデロって何だ、脳みそ腐ってんのか?」
「腐る?何言ってんだよ、脳みそ腐るワケねぇだろ!バーーカ、」
「……」
怒っている。
かなり怒っている祐希を余所に、すっと立ち上がり近くにいたカレンと目があった。
「あの…おにいさん?」
「あ?カレンさん、」
ニッコリと笑う。
「いつも俺の祐希がお世話になってます。」
「あ…はい、」
急に話を振られ、戸惑いながらもカレンは頷いた。
ニコニコしている昴治に祐希は不機嫌極まりない顔で起き上がる。
「本当にガキっぽくて大変ですよね?
昔は可愛かったんですよ。てくてく歩くと靴がピコピコ鳴ってね!」
そして軽く笑い声を昴治は上げる。
「あーーー、靴が鳴るヤツ?」
「そう!で、すぐ転ぶんだ。びーびー泣くんだけど、これまたカワイイんだよ!
にいちゃん、起こしてぇってv」
「っば、何言ってやがんだよ!!!」
いくら正常ではない昴治だとしてもだ、真っ赤な顔で祐希が否定しても
それは肯定と見なされるだろう。
「うるさい!いいだろ!俺の弟なんだから!!」
「はぁ?意味が解んねぇよ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて昴治クンに祐希クン…昴治?」
ふらふらと仲裁に入るイクミを過ぎ、祐希の髪を掴む。
急な事で反応しきれなかった祐希は引かれる痛みに顔を顰めた。
それでも気にせず、ぐいぐいと昴治は祐希の髪を引っ張る。
「お昼寝の時間!行くぞ!!」
「っい、てぇ!!は、離しやがれ!!!」
血の気の多い祐希が、拳を握るだけで殴らないのは相手の事を考えてだろう。
だが今回はそれが裏目に出ている。
「じゃ、おやすみ。イクミにカレンさん!ラリーにマルコ!」
「え?うん、」
「おやすみなさいです。」
「ああ、」
「おやすみ、」
あまりの事の進みに着いて行けず、皆は昴治の言葉を素直に返した。
じたばたするだけの祐希を引き摺るように、そのままリフト艦を出て行く。
それを手を振って見送り…
「……あ、ヤバイわよね!」
「ついつい見送ってしまいました!!!」
要約気づいたイクミとカレンは急いで後を追った。
「離せっ!!」
「いーーや、離しません!」
振り払おうにも髪が掴まれていて出来ない。
殴り飛ばせばいいのだが、肩を考えると思わしくはなかった。
「……アンタ、何処行くんだよ、」
「部屋に決まってるだろ!バカか?道端で寝ろって?」
「バカはアンタだ!」
「祐希だ!」
「兄貴だ!」
「祐希!!」
「兄貴!!」
小学生以下並の言い合いが続き、着れて来られたのは祐希の部屋だった。
着くなりポケットからIDを出し、鍵を開け祐希を押し入れる。
悠々と昴治は中に入り、そして鍵を閉めた。
要約、掴まれていた髪が離され祐希は昴治を睨む。
「アンタな……っ…って、おい!何して!!」
「んーー?」
制服のブレザーを脱ぎ捨て、ネクタイを解いている。
脱ぎ始めた相手に、祐希は真っ赤な顔をしながらわたわたとした。
別に昴治の裸など何度も見ているし、脱ぐ自体はもう既に今さらな事なのだけれども。
「寝るからだろ?」
「寝るって…っ!?」
昴治が駆け寄り、祐希をベッドに寝かすように倒した。
シュル、シュルンッ
「???」
布団のお陰で痛みはない。
だが妙な音に祐希は目を顰めた。
音はすぐに止まり、止まると同時に昴治は嬉しそうな顔をして跨っていた。
「何ヘラヘラしてやがっ……!?」
起き上がろうにも起き上がれなかった。
正確に云うなら、両手が上に上げられた状態のまま身動きが取れない。
「おい、これは何だ!!」
「ネクタイ。」
「そんな事はどうでもいい!」
「玉結びだぞ。」
昴治の云う通り、祐希の両手はベッドの縁にくくられるように縛られていた。
玉結びで。
口をひくつかせ、祐希はギロリと睨んだ。
「何で縛ってんだよ!!」
「ちょうちょ結びが良かったか?」
「そうじゃなくて!!」
「だって祐希逃げちゃうじゃないか!」
情緒不安定な相手に祐希は溜息をついた。
「逃げねぇから、外せ…バカ兄貴。」
「や、」
即答に奥歯を噛んで、祐希は昴治を睨んだ。
昴治は祐希の胸の上に手を置いて、ずいっと覗き込んでくる。
「今日は俺がする!決めた!決まり!!」
「…するって…何を?」
「え?そんなの、いつもと逆な事をするに決まってるだろ!」
「いつも?」
昴治の言葉に正直に祐希は考えた。
だがすぐにそれは浮かぶ。
「するか!馬鹿か!!」
「……イヤ?嫌なのか?俺じゃあ…ダメ?」
先ほどまでの強気な態度は何処へ行ったのだろう。
眉を寄せ、今にも泣き出さんばかりの表情で覗き込んでくる。
睨む祐希はけれど、顔を逸らして息を吐いた。
「…祐希?」
「……別に…アンタがしたいんなら……」
「ん?」
首を傾げる昴治を祐希は見た。
「俺に入れたいんなら、キモチヨクさせてみろよ。」
挑発するような言葉に昴治は真剣な顔をする。
そしてコクリと頷いた。
「がんばる!」
「……」
にこっと笑い、顔を近づけてきた。
いつもなら躊躇いがちの唇が簡単に触れてくる。
ふんわりとアルコールの匂いが鼻腔に感じ、祐希は目を顰める。
昴治は舌で唇を割り、中へ舌を侵入させた。
祐希の躯はピクリと震えるが、昴治の舌の動きは擬心地ない。
「んう!?」
縛られている方の祐希が顔を少し上げ、被りつくように舌を絡ませた。
驚くように声を漏らす昴治だが、上げた顔を支えるように後頭部に手を当て
応えるように舌を動かす。
「ん…ふぅ…ん…」
「…んぅ……」
互いに息が漏れる。
唇を離せば、名残惜しそうに両方の舌が外で絡まった。
後頭部を支えていた手がゆっくりと祐希の頬を包み、昴治はキスの雨を降らす。
(くすぐってぇ…)
ふと思わせる。
もし、もしもの話だ。
今、兄の傍にいるのが自分ではなく――他の知らない少女だったら、
昴治は今のように触れていくのだろうか。
不安を消すように。
神聖な儀式のように。
そう思えば思うほど、胸苦しくなるがある意味笑えた。
そのありうる可能性も、いま自分は“最初”の人物となっている。
(ゾクゾクする…)
目を細めた祐希の瞼に昴治はキスをして、祐希の服を脱がしていく。
縛っているので上着はフロントを外すだけだ。
「……えっとぉ…」
上に乗っている昴治は髪を掻き分け、祐希の胸に唇を寄せた。
撫でるように躯に触れながら、ゆっくりと乳首を吸う。
「っ……」
縛っている手が動き、ベッドがギシリと鳴った。
「…い、噛むな…っ、バカ兄貴…」
「んん…むむーーー……んぅ…」
抗議する祐希の言葉を聞かず、昴治は強く噛んだ。
「っ!」
動く手は縛っているネクタイを引き千切りそうに伸びる。
けれど逆に手首を強くしめつけた。
「っ…この……下手くそ、」
何度か強く噛み、唇を離した後には歯型が残り乳首が赤く腫れていた。
「いてぇ…キモチヨクないぜ?」
「……祐希ぃ、」
「…あァ?」
胸の上に頭を乗せたまま昴治は祐希を見た。
やはりまだ酔いは覚めてはいないようである。
目がトロンとしていた。
「よく…ないか?、」
「ねぇよ………バカが、」
「…ん、」
少し俯き、体を這わすように昴治は下へ移動する。
ズボンのベルトを取り去り、チャックを口で開けた。
モノを躊躇もなく、取り出して昴治は口に含む。
顔を上げ、その動きを祐希は見ていた。
昴治とは行為こそもう数え切れないほどしているが、戸惑いもなくモノに奉仕しだすのは新鮮だった。
「はむぅ……ん…」
「……はぁ…」
零れる息は熱を含む。
モノを大事そうに持ち、咽喉奥まで使い昂ぶらせていく。
音が響き、少し苦しげな声を鳴らした。
「っ……はぁ…ぁ…」
別に不感症でもない。
けれど祐希の口から零れるのは溜息に似た声ばかりだった。
眉は寄らず、ただ恍惚とした艶のある表情へと変わっていく。
ビクンと脈打ちを昴治は舌で気づいた。
「…あにき……」
音も出ないほど強く吸い、ぴくりと動く腰を押さえつけた。
あと少し。
そこで昴治はぎゅっとモノの根元を掴んで口を離した。
体をすりつけるように、そのまま移動して唾液で濡れる唇で祐希にキスする。
「っ…う…」
「ダメだぞ…まだ…」
顔にくすぐるようなキスをしながら、掴んでいるモノを昴治は煽った。
思えば、よくキスをしてくると祐希はぼんやり感じる。
(そう云えば……あん時…)
遠い昔のようで忘れもしない、初めての時。
昴治は小言を云いながらも、泣き懇願をするまで追い詰めた。
そんな昴治が最初に強請ったのはキスだった気がする。
今では、他の事も強請るようになったけれども――理性がなくなればの話だが。
と、祐希は色々考え込んでいた。
「何処…見てんだよ、」
「あ?……っ!?」
頭上に掛かる昴治の声に意識を浮上させる前に、急な感覚に硬直する。
大きくなったモノを解放しないまま、その奥の穴に何も施しもなく指を入れたのだ。
当然だが、後ろは“初めて”である。
「…っ、う……」
頬が赤く染まる。
妙な感覚が広がるが、決して良いものでもなかった。
「……熱い……中…指、キツイ…」
「…うっ…アニキの方が……」
「ん?」
「中…熱いぜ、」
痛みに少し歪む表情を昴治はキスで宥めた。
「そう…なんだ……」
学習しているかのように頷く兄に弟は少し肩を落とす。
結構、ムッツリな所もある癖に変に純粋な部分があってまいる。
「…つっ、い……いたっ……」
「ん…痛いのか?」
手を動かしながら、首を傾げる様は可愛かったりするものだから。
「あ……」
溜息に似た喘ぎが零れ、祐希は欲を吐き出す。
飛び散る液は昴治の手と胸元、そして自分のお腹を汚した。
淫靡な光景に祐希は目を顰め、少し昴治から目を逸らす。
「んん……出た、出た…」
「……っ…」
昴治は穴に入れていた指を抜き、手についた液を舐めた。
そしてニッコリと――あまり見せない子供っぽい笑顔を昴治は見せる。
「……よくできました、花まる…」
「…………」
(何がだ、)
と内心でツッコミを入れるが、ニコニコしている相手に言う気が起こらなかった。
それより何を言っても無駄という方が勝っているが。
「俺の……祐希、」
そう云って昴治が倒れこんでくる。
「………アンタの…俺、」
呟き、重みが増す上にいる昴治を見た。
相手の表情を見て、軽く笑う。
「……バカ兄貴……俺のアニキ……」
「………………」
これほど呆然とする事はないだろうと昴治は思った。
「……え、なんで……」
朝、目覚めると頭が酷い痛みに苛まれた。
少し思い身を起こせば、下には祐希がいる。
その光景に呆然と言うより、言葉を失った。
自分のネクタイで縛られた腕、肌蹴る胸に乾いた白濁の液。
気絶したのか少し顔色の悪い弟の顔と乱れた髪。
「ん…?」
何をしたのか一目瞭然な光景の中、その張本人である祐希が目を覚ました。
「あ…あのさ、祐希……」
目覚めの弟は些かぼーっとしている。
覗き見るようにすれば、徐々に鋭さが宿っていった。
「…アニキ、」
「ああ、俺さ…なんで…そのリフト艦…」
リフト艦にいた筈なのにと言いたいのだろう。
すっと細まる相手の瞳に昴治は肩を竦めた。
「覚えてねぇのか?」
「いや、その、覚えて……そのー…覚えてないんだけど、えっと」
「……」
「あーー、あのさ、俺…何か…しちゃった?」
「見ての通りだぜ。」
一刀両断に言う祐希に昴治は頭を垂れた。
(俺って…俺って、俺って……)
もう関係はあるのだから、そんなにショックを受けるほどではない。
けれど状況が手を縛っての行為であって、無理やりっぽい所がまた自分の
趣味を疑われそうで申し訳なささとショックがわいた。
「……アンタさ、下手だったんだな。」
「う…」
胸には鬱血の痕、そして乳首は歯型がくっきりと残り赤く少し腫れていた。
目の当たりにする情事の痕に昴治はもはや何も返せずにいる。
「あの……祐希、」
「…手、」
「あ、ああ、悪い」
きつく縛っていたらしいネクタイを昴治は急いで解いた。
解けた手をそのまま昴治へ伸ばす。
謝罪を言うにも、言葉だけでは軽すぎた。
殴られるかと思われた手は昴治を包み、引き寄せる。
「最悪だな、アンタ……」
「祐希、その……っん、」
咥え込むようにキスをされ、昴治の瞳が滲む。
「はぁ……」
息がかかり、眉を寄せられた昴治を見て唇に笑みを浮かべた。
「安心しろよ、まだ俺はヴァージンだから、」
「ゆ、祐希!!」
「俺の祐希って言いまくってた方が恥ずかしかったんじゃねぇ?」
「え…マジで!!マジでそんなこ……むぅぅっ!!!」
体を反転させるように、昴治が押し倒され祐希が上に圧し掛かる。
しつこく絡む舌に思考が溶かされていった。
「他の奴と一緒に…もう酒飲むな……俺とだったら許してやるが…」
「ん……え?どういう…意味……ふぅっん、んーーー…」
いつものようにリフト艦へ続く通路を祐希と、
それに絡むようにカレンとイクミが歩いていた。
「おはようっつーか、一応おそよー?
昴治クンはどうしたですか?」
「昨日、探したんだよ?」
一応、安否は気遣っていたらしいイクミとカレンは事の真相を聞き出そうとしている。
表情はなく、飄々と歩いている祐希だが些か機嫌がいいのが解った。
「ちょ、何かあったっすか!!」
「祐希、とっても気になるんだけど!」
「…さあな、アニキにでも聞いてみればいいだろ。」
その言葉にイクミは頬を膨らます。
「何それ!!めっさ含みにある云い……何だ、その痕!?」
「凄い痣になってるけど…祐希?」
イクミが指差したのは、手首の痣だ。
くっきりと青く残る痣は痛々しい。
あまり気にもしていないのだろう痣を撫で、祐希は目を細めた。
「さあ?アニキに聞けよ、」
「つーか、昴治クンはどうしたんすか!!!」
「ちゃんと説明しなきゃ解んないよ、お兄さんも今日見かけなかったし。」
痣を撫でながら、祐希は言う。
「二日酔いじゃ…ねぇの?」
軽く表情には笑みが混じっていた。
(終) |