***ある暑い日
ただいまの気温39度。
「あちぃ…、」
「暑イ、アツイヨ……、」
温度調節機器の故障による気温の上昇。
今、リヴァイアス内は真夏と同然だった。
「あのさ…二人とも、どこにいんだよ。」
昂治の問いに、
「兄貴の膝上。」
「こうじ、お膝、上。」
答えた祐希とネーヤは膝枕をしてもらっている。
「てめぇは、なんでココにいんだよ。」
「ドッカイッチマエ。」
「頼むから、ケンカするなよ。」
二人の頭をポンポンと軽く叩いた。
祐希は舌打ちをして、横向きになる。
ネーヤも同じように横向きになった。
「リフト艦に行ってろよっ。」
睨むような目つきでネーヤを見る。
「邪魔ナンダヨ、コノヤロウ。」
ネーヤは平然とソレを返した。
「だいたい、暑さとか感じんのか?」
「ミンナ、暑イ、暑イ…思えば、ネーヤ暑い。」
「なんだ、それっ、」
上を向く。
続いてネーヤも上を向いた。
呆れにも似た表情で、昂治は見ている。
「コノ女がいなければ、ヤレルのに。」
「!?」
「おい!!祐希っっ!!!」
頬を真っ赤にして、昂治が怒鳴ってきた。
「なんも言ってねぇだろ!言ったのは、この女だっ!!」
「……アア、触リタイ。」
「てめぇも、言うんじゃねぇよ!!」
機嫌の悪い表情も、すぐに引いていった。
祐希の息が少し上がっている。
「……あちぃ……。」
体力を消耗したらしい。
先ほどよりグテーとした。
「あと、二時間ぐらいだろ。」
それでも、ぶすっとした祐希の顔に昂治は息をつく。
「アツイ、ね。」
「そうだな。」
ネーヤに答えて、仕方ないと云った風に昂治は視線を上げた。
二人に膝枕をしてあげながら、昂治は手を伸ばして薄い冊子を取り出した。
そのままパタパタと二人にそれで扇いだ。
微風が祐希とネーヤの髪を揺らす。
「涼しいか?」
「……ああ、」
「涼しいヨ、こうじ。」
トロンとした目つきになった祐希とネーヤは
少し経って小さな寝息をたて始めた。
「よく寝れるな…こんな暑い中で。」
すやすやと寝ている。
「しかも俺なんかの、膝枕でさ……。」
扇ぐのを止めて、寝入った二人の頭を撫でた。
無邪気なそれこそ、天使のような寝顔に自然と笑みが零れる。
「おやすみ。」
いい夢が見られますように。
(終) |