+++ももいろキス
お菓子に似てる
甘い、あまいよ
お花に似てる
いい香り、いいかおりだね
「イクミぃ、」
今日は云わば休日で、めずらしく昂治は
イクミと部屋でぼーっとしていた。
いつもながら、キチンとしていろと言うはずの昂治も、
ベットの上にぐてーと横たわっている。
それでも、ちゃんと身仕度は整えているが。
イクミも同じくベットに横になっていて、昂治をの方を見た。
ぼーっとしている目が見えて、呼んだのは、気のせいかと思った。
「イクミぃ…、」
気のせいでは、なかったようだ。
「なにー?昂治クン。」
「キスしたい。」
「いいっすね〜、キスか…キス?キスっ!?」
ガバッと文字通り跳ね起きて、イクミは昂治をおもむろに見た。
「誰と誰がっ!!」
「イクミと俺…、」
「ぅえええええ〜〜、何をいきなりっ!!」
わたわたとしているイクミに、そっと昂治は瞳だけ向ける。
「イヤなら、いいけど。」
「あの、いや〜そうでなく〜〜っ!」
普通はイクミ自身からが多い。
ほとんどだろう。
焦る昂治がかわいくて、少しいじわるなんかして…
それが大抵だ。
なのに今日は昂治からだ。
イクミは妙に焦る。
「してくれるのか?」
「します!させて頂きます!!レッツ・ビギンですよ!!!」
昂治はゆっくりと体を起こして、ベットの上に座る。
トタトタとイクミは近づき、目の前に立った。
「するよ。」
咽喉に少し渇きを覚える。
「ああ……。」
肩に手を置けば、ゆっくりと昂治は目を閉じた。
――うぅーーー、なんか…、
緊張する。
もっと色んなコトをしているというのに、小さな余裕は失くなっていた。
その余裕もコトになれば、すぐ吹き飛ぶものだが。
色素のうすい髪、
長い睫毛、
ももいろの唇。
凡人だとよく言われるだが、実際はとてもキレイな顔立ちだ。
ぎくしゃくと云った感じで、イクミは唇を寄せた。
ふわっと広がる。
甘くて、いい香り…。
やわらかい感触に目眩みをしながら、
ふと昂治の膝上に置かれた手を見る。
その手はギュッと握られ、小刻みに震えていた。
唇を離すと、ゆっくりと昂治は目を開ける。
「したいって言ったわりには、緊張…しすぎじゃない?」
ニタリと笑えば、昂治の目が見開かれ真っ赤になる。
「お、おまえこそ…きんちょーしたクセにっ、」
「んにゃー、でも嬉しい∨俺が欲しいって言ってくれたんだしぃ∨」
ますます赤くなって、うつむく。
「いやーん、プリチー∨∨」
「イクミのばかっ!」
ぎゅっと昂治は鼻をつねった。
「いったーーい!!」
「ほら、だれてないで。部屋の掃除でもするぞ!」
いつもの調子に戻る昂治に、イクミは色目を向けた。
「一日中、ベットの上にいません?」
お菓子に似てる
甘い、あまいよ
お花に似てる
いい香り、いいかおりだよ
あなたのキス
ふいにキスがしたくなる。
(終) |