+++許しの花束
彼の存在を呼ぶ。
答えない。
ソンナ義務アルワケナイ
自分は狂った。
壊れた。
そして逃避から現実に戻される。
「……この花、贈りたいんですけど……、」
「はい、かしこまいりました。」
店員が注文した花をセロハンで包んでいく。
愛するとはどういう事か。
守る事だ。
守るとはどういう事か。
愛する事だ。
何をしようとしていたのだろう。
面影のない彼女に愛しい人の影に重ねて、
そして全て守ろうとした。
守れているはずだった。
強く築きあげられたセカイに刃向かう者はいない。
いるとしたら、消し去る。
そう思った。
なのに刃向かった者は守られている者だった。
彼の人は云った。
死んでいると同然だと、
そんな者が何故、自分の前に現れたのだろう。
じっとしている。
動かないハズの者が、やってきた。
自分への否定をかざしながら。
だから消す。
だから排除する。
誰も止めない。
誰も咎めない。
正しいのは自分で、間違っているのは彼だ。
サヨナラ
平気だ。
守るためなら、どんな事だってする。
平気でいられた。
なのに、彼は来た。
なおも自分の元へ来た。
そして笑う。
このセカイを壊した。
笑う。
否定でなく、認めながら、自分を抱く。
愛するとはどういう事か。
「…姉さん…、」
「え、何か?」
「いえ……。」
花束がキレイに包まれた。
「メッセージはいれますか?」
「いれます……、」
やわらかな香り。
白い薔薇。
満たされていく感覚。
煮えたぎる闇。
「相葉昂治へ……と、お願いします。」
醜い心が、また求めだす。
全てが傾いて、一つの想いが生まれる。
許さなくていい。
許されなくていい。
だから、せめて
アナタを愛していいですか?
(終) |