+++KISS YOU
「――順調ですよ。」
午後、面会の時間ギリギリ。
白い部屋が夕焼けで橙になる頃。
俺は目を閉じ、息を吐く。
キィ……バタン、
ドアの開く音がし、人の入ってくる気配がする。
それは近くまできて、俺は目を開いた。
「……」
黙って祐希が見下ろしている。
コイツが来てるなんて、誰が想像するだろう。
母さんもあおいも、他の人だって知らない。
でも1日かかさず、祐希はココに来ている。
どう接しればいいのか、わからない。
何を言えばいいのか、わからない。
祐希は変わった。
俺も変わった。
そして何も変われずにいる――そう思う矛盾。
でも俺は自惚れている。
祐希がココに来るのは、心配してくれているからだと。
だから笑う。
鋭い目つきは、苛立ちを起こさせなくなった。
自分がひどく落ち着いていく…
ベッドに手が置かれ、軋む。
広がる。
おまえの瞳が揺れて、
少し乾いた感触――
唇に伝わる。
頬が熱くなっていく。
舌で唇をなぞらえる。
真似て、俺は相手の下唇を舌でなぞった。
「兄貴……」
頭を撫でられ、
その行為とは合わない鋭い眼差しを向ける。
そして、祐希は離れ目を伏せた。
何も言わず、そのまま病室を出て行った。
「……」
俺しかいない病室。
「……なに、してんだよ。」
何回、キスしただろう。
しかも弟とだ。
驚きはあったけれど、嫌悪はない。
毎日、繰り返すコト。
他の人が知ったら、どう思われるかな。
どうでもいい。
そう思う自分がいる。
けれど現実から背けるコトはしたくない。
だから考える。
アイツはどういうつもりなのか、
俺はどうしたいのか、
でも祐希のコトだから何も言ってくれないかな。
俺が言わないとダメなのかな。
何を言えばいいだろうか。
まだわからないけれど、
俺は祐希を毎日待ってる。
なぁ、祐希……
このキモチは何?
(終) |