…++ずっと一緒++…
約束しよう。
約束ダヨ。
ああ、約束だ。
気づくと俺は抱きとめられていた。
「大丈夫…?」
赤い瞳に自分が映る。
何て顔してるんだ、昂治。真っ青じゃないか、
「ごめん、朝ごはん抜いたからかな。」
「平気…ネーヤ、ぽかぽかする。」
ぽかぽか…あったかいって事かな。
女の子に抱きとめられるなんて、情けないんだけど、力が抜けてすごく楽だ。
でも、このままじゃ悪いから、俺は体を離した。
「疲レタノ?」
「…うん、そうかもしれない。でも、大丈夫だよ。」
軽くネーヤが笑う。
ふわっと浮き上がって、俺の周りをトントンと跳ね回った。
踊ってるのか。
「あるがと、元気づけてくれてるんだよね。」
「コウジ、嬉シイ。ネーヤも嬉シイ。コウジ、幸セ。ネーヤも幸セ。」
後ろに回りこんだネーヤが俺を抱きしめてくる。
空気に囲まれてるような感じだ。
「ミンナ、幸セ…ネーヤも幸セ…、」
「そっか…ネーヤはエライな。」
「エラくない、よ。」
自分の心は決してキレイな物じゃない。
生きていく中で、時には黒い濁流になる。
それを知っている。
知っていて、受け止めようとするネーヤエライと思う。
それでも尚、キレイなままだから。
「ネーヤ、エラくない。ネーヤができるのは、それくらいだから。」
「そんな事ないって、」
浮き上がって俺の前に降り立った。
「ダカラ…こうじ好きダヨ。」
「え、あ…ありがと。」
好きって言われるのは、嬉しいけど恥かしいものがある。
けれど、嬉しいって気持ちが大きくて、俺は自然に笑っていた。
ネーヤも笑って、また抱きついてきた。
「こうじ、ネーヤ好き?」
「好きだよ。」
俺はネーヤの背中を撫でた。
「こうじ…好きダヨ。」
「ありがと、な。」
肩に軽く両手を置いて、ネーヤが俺と目を合わす。
嬉しい。
けれど、どうしてこんなに胸が痛いんだろう。
「ずっと、一緒。イイ?」
俺が黙っていると、眉を寄せて、怯えたような顔をする。
「…いいよ、」
答えると、パッと明るい顔をした。
「でも、ちゃんとやるべき事はしなきゃな。」
「うん、する。こうじ、ダカラ、ずっと一緒。」
「ずっと…一緒、」
胸が痛い。
ネーヤもわかっているのかな。
泣きそうな顔だよ。
俺ハ君ト、ズット一緒ニイレナイ
知っているんだね。
「約束だよ、こうじ……、」
「ああ。」
笑ってみる。
涙が出そうなのは、どうしてだろう。
ひどくネーヤが悲しく見える。
けど、一番知っているのは彼女で、陳腐な涙は時として傷つける。
だから俺は泣かない。
約束を守るよう頑張る。
「さて、訓練しないとな…ネーヤはどうする?」
「一緒にいく。」
腕にしがみついてきた。
「ずっと、一緒ダヨ。」
「うん、」
瞳が合う。
「イナクナッタラ、探す、ヨ。」
「ネーヤなら、すぐ見つかるな…。」
「ウン、こうじ、怒らない?」
瞳が揺れて、俺を映した。
「怒るわけないだろ。何を怒るんだよ。」
よかった、とネーヤが息をつく。
「じゃあ、行こっか。」
「ウン!」
あいかわらず、ふわふわした足取りでネーヤは俺と一緒に歩く。
一緒に…か。
ずっとは無理だろう。
君と俺は違う。
だからといって、離れるつもりはないけれど。
たぶん、近い未来…近い明日。
俺は君から離れるコトになる。
全ての人に平等に与えられるもの。
それが俺に降りかかる。
自分が、よく解かっている。
恐くはない。
だって、君がいるから。
約束もしたんだから。
ずっと、一緒にいる。
でも胸が痛いんだ。
どうしてかな。
どうしてだろう。
俺は、そう思うコトにする。
きっとわかっちゃいけない答えがあるから。
ああ、やっぱり早く降ってきた。
暗くなってくる…周りが、ぼやけてきた…。
約束やぶって、ごめんな。
「ずっと…ずっと…――、」
でもさ、
やぶるつもりはなかったんだ。
約束しよう。
君ト、ズット一緒二イル事ヲ、
いなくなったら、探して。
今も、約束をやぶる…つもりないから。
約束しよう…約束…ネー…ヤ……
そして、アナタは動かなくなる。
(終)
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