***ほしのなかに









ふわりとネーヤが降り立った。

「どうして…なんだ。」

たどたどしく、言葉を紡ぐ。

「どうして、どうして…。」

遠くで見ている白衣の男たちを、めずらしそうに見る。

「どうして…平気なんだ?」

鏡のようにネーヤは心を返す。

「彼は……なぜ……。」



彼……アイバ コウジ?




展望台に昂治がいた。イスに座り、宇宙を見ている。
ネーヤはそっと近づくが、すぐに昂治は気づいて顔を向けた。

「ネーヤ?」

「うん。」

やわらかく昂治が微笑む。ネーヤも同じく微笑んだ。

「なに、してるの?」

隣りに立って、ネーヤが聞く。表情に笑みを残したまま、宇宙の方を見て、ネーヤを見た。

「星を見てた。」

「ホシ………星?」

ネーヤの言葉に、コクリと頷く。

「こうじは、星を見ているの?」

「そうだよ。」

「じゃぁ、ネーヤも見る。」

隣りにストンと座った。

「なんで…見るの?」

「キレイだから、かな。地球じゃ、あんまりキレイに見れない。」

「キレ…イ?」

ネーヤが首をかしげる。

「キラキラしてて、電気より優しい光だろ。」

昂治はネーヤの問いに真面目に返す。それも嘘ではなく、本心からの声だ。

「キラキラ……。」

ネーヤは星を見て、昂治に笑みを向ける。

「キレイだろ?」

「うん。」

ニコッと笑い合う。落ち着いた和やかな雰囲気が漂う。
それは普段、忘れてしまいそうな時の流れだった。

「こうじ…は、スゴイの?」

目を見開いて、昂治は体を傾ける。

「凄いって、何が?」

首をかしげて、ネーヤは昂治を見る。

「白い服着たヒト…ネクタイしてたヒト…大人のヒト、言ってたよ。
アイバ コウジはスゴイ…どうして、なんだ?って言ってたよ。」

「凄くないよ。」

頭を少し掻いて、昂治は言った。ネーヤはふるふると首を振る。

「ネーヤとリンクするとバックヤードするって。
セイシンシハイされるって、言ったよ。シンクロしているのにって……。」

「それこそ、凄くないよ。ネーヤとただ、話とかしてるだけだろ。当たり前のことだし…
ほら、話さなかったら無視してるってことだし。自然なことだと思うよ。」

深い青色の――海の揺らめきのような――瞳が向けられた。

「うん。」

青の揺らめきを、ネーヤはキレイだと感じた。何もなかった自分のココロの中を満たす、昂治の心は温かかった。
壊れてしまいそうに透明でちいさな光を燈す。

「ネーヤ、こうじ好き。」

優しく笑みを昂治は浮かべた。

「こうじは、ネーヤ好き?」

「好きだよ。」

その言葉に、花咲くようにネーヤは微笑む。
どこかで見たヒトの行動のように、ネーヤは昂治の手を触れた。昂治が不思議そうに見る。

「こうすると、ココチヨクなるんだって言ってた…なる?」

同じように昂治も笑みを浮かべて、ネーヤの手を握った。
低い体温なのに、あたたかくて、手に溶け込むように馴染むとネーヤは感じる。

「星…キラキラ…してるね。」

「そうだな、ネーヤ。」

二人は手をつないで、星を見た。

ネーヤはふわりと降り立った。
白衣の男たちを見る。

「どうしてなんだ。」

心が伝わってくる。めずらしいモノを並べられたようで、ネーヤは不思議そうに見た。
口にする男たちの心は、霞がかかっている。見られたくない、と云う心が伝わってくる。



 アイバ コウジ…



話をしたくなった。霞がかからない、昂治の心を受け止めたくなった。
近くにいたいと、ネーヤは確かに感じた。








そして、いつかあるとき。

リヴァイアスAra7の上にネーヤは降り立つ。

「星…キレイ。」

また一緒に星を見よう。
あいかわらず、星はキレイだから。
煌めくあまたの星々。明滅を繰り返すそれは優しい光だった。




あいば こうじ――――。




この星の海のどこか。そこに昂治がいる。そうネーヤは思った。
進んでいけば、きっと逢えて、また話をしてくれると、




こうじ………






この宇宙のどこかに。





(終)
ネーヤ×昴治の美味しいトコは
片方が人外で無垢な所ですよね。
純粋に思い続けるからさこその……

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